「確かに、〝今日まで生きてきたんだよ〟って言われたら、〝まあ、そうね〟ってなるわね」
「でしょ」
「調子に乗らないでください」
テーブルの下で、
そっと春日井先輩の足をつつくと、
くすっと笑いが返ってくる。
「でもさ」
義母が、ふっと真顔に戻る。
「本当にケンカしたら、一回はうちに報告しに来なさいよ」
「えっ」
「どっちが正しいとか決めるんじゃなくて、〝今日はここでしくじって、こうするべきだったな〟って、第三者に聞かせるのって大事だから」
その言い方が、少し可笑しくて、
でもありがたくて。
「……めんどくさくないですか?」
「めんどくさいわよ」
あっさり。
「でも、〝めんどくさい理解者〟くらいが、ちょうどいいのよ」
その一言に、胸の奥がじんわりする。
「ね、歩実」
名前を呼ばれて、顔を上げる。
「あなた、一人で勝手に〝間違えた〟って決めつけるクセ、まだあるでしょ」
図星だった。
「そういうときは、まず隣の彼氏に話して」
さらっと、〝彼氏〟と言われて、
スプーンを落としそうになる。
「その次に、うちに持ってきなさい」
「そこ、順番決まってるんだ」
「当たり前じゃない。パス回しが重要なんだから」
義母のバスケ喩えに、春日井先輩が思わず笑う。
「コーチより分かりやすいかもしれないです」
「でしょ?」
「自分で認めないで」
三人で同時に笑って、
テーブルの上のカレーが少しだけ揺れた。


