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最初のひと口を食べた春日井先輩が、
少し目を丸くする。
「え……うま。うますぎです」
「よかった」
義母が、ほっと息をつく。
「市販のルーに、ちょっとだけ隠し味を加えてるだけよ」
「隠し味、って何入れてるんですか?」
「企業秘密」
「いや、そこ、秘密にする必要ある?いんじゃない、教えてあげれば」
「企業秘密なの」
同じ言葉を繰り返すわりに、どこか楽しそうだ。
「でも、なんか懐かしい味ですね」
先輩が、もう一口食べる。
「部活帰りに家帰ったときの、あの匂い思い出しました」
「バスケやってたころ?」
「はい。遠征帰りとかに、カレーの匂いがしてると、〝あ、今日勝っても負けても、とりあえず元気もらえるな〟って思ってました」
その言い方が、妙に胸にしみる。
「じゃあ今日は、隠し味のヨーグルトを入れた〝勝負カレー〟ね」
義母が言う。
「あれだけ企業秘密って、言ってたのに言っちゃうんだ」
「春日井くんは特別にね」
サラダを取り分けながら、さらっと言う。


