「歩実が、ちゃんと自分で立って、自分の言葉歌ってるの見て、ああ、もうこの子は、〝ただの良い子〟じゃなくて、ちゃとした私の〝大事な娘〟なんだなって」
喉の奥が、じんと熱くなる。
「〝良い子〟でいてくれなくてもいいから」
義母は、まっすぐに言う。
「ちゃんと、今日まで生きてきた〝私の〟大事な娘として、これからも迷ってくれればいい」
「迷って、いいの?」
「うん」
あっさり。
「その代わり、〝迷ってる〟時は、ちゃんと教えて」
テーブル越しじゃなく、ステージの客席越しでもなく。
今は、ただの『親子』として向き合っている距離。
「この前の約束、守るから」
義母は、少しだけいたずらっぽく笑う。
「味方やるって言ったでしょ」
その一言で、視界がにじんだ。
「……ありがとう」
何度言っても足りない言葉が、また口からこぼれる。
「〝迷惑をかけない良い子〟じゃなくなっても、嫌いにならない?」
「そもそも、そんなに良い子じゃなかったでしょ」
「え、ひどくない?良い子にしてたつもりだけど」
「ほら、すぐそうやって言い返してくる」
二人して、少し笑った。


