君が照らす人生は、いつだって温かい




ステージに上がる直前、
ふと客席のほうを見る。

体育館の後ろのほう。

出入り口の近く。

そこに、見慣れたシルエットがあった。

仕事帰りらしく、
きちんとしたブラウスにパンツ。

髪を後ろでまとめた、義母。

観覧券を片手に、
少し落ち着かなそうに立っている。

目が合った。

義母は、わずかに目を見開いて、
すぐに口元をほころばせた。

小さく、手を振る。

それだけで、胸の奥がじんと熱くなる。


――ちゃんと来てくれた。


それを確かめた瞬間、
足の震えが少しだけおさまった。



「山谷さん」



袖から出ていこうとしたとき、
春日井先輩が呼び止める。



「今日さ」



「はい」



「〝うまくやろう〟より、〝ちゃんとここにいる〟ほうを、優先しよう」



その言葉は、あの日と同じだった。

川沿いの夜。

欄干。

『今日まで生きてきたんだよ』。

全部が、一気に喉の奥までせり上がってくる。



「……はい」



うまく笑えたかどうかは、分からない。