「昨日、担任の先生からのメール見て初めて、〝歩実がライブハウスで演奏してる〟って知ったの」
「……」
「事前に、〝こういうのに出るよ〟って、あなたの口から聞きたかった」
図星すぎて、顔を上げられない。
「〝言ったら反対されそうだな〟って思った?」
「ちょっと」
「で、〝ギリギリまで黙って、既成事実にしちゃえ〟って思った?」
「……うん」
そこまで読まれていたのが、情けない。
「そういうところが、一番不安なの」
義母は、テーブルの上で両手を組む。
「バンドやるのはいい。でも、〝親に黙ってまででもやりたい〟って方向に走っちゃうと、だんだん取り返しがつかなくなる」
その気持ちは、分かる。
でも、こっちにだって言い分はある。
「じゃあ、聞くけど」
自分でも驚くくらい、はっきりした声が出た。
「お母さん、昨日〝頑張ってきなさい〟って言った?」
義母の眉が、少しだけ動く。
「昨日じゃなくてもいい。バンド始めるって話したとき、バンド練習に行くとき」
「……」
「〝どうせ続かない〟って、最初から決めてかからなかった?」
義母は、少しだけ目を細める。
「それは」
言いかけて、飲み込む。
「私、怖かったの」
自分の手をぎゅっと握りしめながら言う。
「ライブハウスも、バンド演奏も、初めて人前で歌うのも、全部」
「うん」
「だから、本当は〝頑張ってきなさい〟って背中押してほしかった」
それは、昨日の自分の本音だった。


