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「やるじゃん、〝ありがとう〟出たじゃん」
ホームルームが終わってすぐ、
瑠奈に報告すると、
彼女は机をばんばん叩いて喜んだ。
「〝ごめんなさい〟封印計画、順調な滑り出しですね〜」
「一言言っただけで、計画とか言わないで」
「でも、初動が大事だから。で、親の反応は?」
「えっと……目、丸くしてた」
「そりゃそうだ。レアキャラが急にレアセリフ言ったみたいなもんだし」
「ゲームの話みたいに言わないで」
「でもさ、その〝ありがとう〟が言えた時点で、あんたの人生のストーリー分岐、ちょっと変わってるからね」
さらっと大きなことを言う。
「そんな簡単に変わるかな」
「変わる変わる。物語って、だいたいそうじゃん。主人公が今まで言えなかったことを一言言った瞬間、フラグ立つの」
「……何のフラグ?」
「それは今後のお楽しみでございます」
瑠奈は、にやりと笑って席を立った。
「今日さ」
「ん?」
「帰り、寄り道しない?」
「また体育館?」
「いや、今日は別ルート。駅前のCDショップ」
CDショップ。
その単語に、少し胸が動いた。
「何しに?」
「新譜《しんぷ》出るんだよ、あのバンド。ほら、こないだ私が貸したやつ」
「ああ、あの、歌詞がちょっと重いやつ?」
「重いけど〝救い〟もあるやつね。あれのメジャーデビューアルバム」
瑠奈のテンションはすでに高い。
「で、あんたもさ。なんか一枚くらい自分で〝これ好きかも〟ってやつ探しなよ」
「私、お金ない」
「じゃあ見るだけでもいいし。視聴コーナーで、一緒にイヤホン半分こしよ」
その提案は、
なんだか修学旅行の夜の内緒話みたいで、
少しだけ楽しそうだった。
「……いいよ」
「お、即答。成長!」
「成長って言わないで」
「はいはい。じゃ、放課後集合ね」
教科書を鞄に押し込みながら、
胸の奥が少しだけ明るくなる。
昨日までの自分なら、
『勉強しなきゃ』で即座に断っていたかもしれない。
でも、今日は。
〝息抜きしてもいい〟と、
朝、誰かに許可をもらえた気がしていた。


