「よかった」
安堵の笑い。
「じゃあ、とりあえず」
手のひらを、こちらに向けてくる。
「バンド名決めきれずの、初ライブ成功ハイタッチしとこ」
唐突すぎて、笑ってしまう。
「成功のわりにバンド名ダサいです」
「バンド名決めきれず、略して〝バン決め〟」
「余計ダサいです」
でも、手はちゃんと合わせた。
ぱちん、と軽い音がする。
その瞬間、手のひらから心臓まで、
変に熱が走った。
電車の中でのハイタッチなんて、
ちょっと恥ずかしい。
でも、すごく嬉しかった。
駅に着くと、改札前で一度解散になった。
「じゃあ、また明日」
「おつかれさまでした」
春日井先輩と別れて、
家までの道を一人で歩く。
街灯の下で、自分の影が少し揺れていた。


