「じゃあ、まずドラムからいこうかー。バスドラ、ドンって」
「はい」
美由紀さんが、スティックでバスドラを踏む。
ドン。
ドン。
体育館の鳴りとは、全然違う。
低い音が、床から足に伝わってくる。
「はい、次ベース」
瑠奈が、緊張で固まりながらも弦を鳴らす。
「お、いいね。もうちょいボリューム上げようか」
ギター。
そして、マイクチェック。
「ボーカルさん、マイク入ってるか確認しまーす。なんか適当にしゃべって」
「え、適当って」
いきなり振られて固まる。
「自己紹介とかでいいよ」
「あ、えっと」
ステージから見下ろす客席は、
まだほとんど空っぽだ。
それでも、暗闇から誰かに見られている気がする。
「えっと、山谷歩実です。今日が、初めてのライブハウスです」
「初々しいね〜」
PAさんの声に、スタジオ内に笑いが起きる。
後ろで、
美由紀さんがスティックでスネアを小さく鳴らした。
その音が、合図みたいに感じられて、
少しだけ肩の力が抜けた。


