翌朝、目覚ましが鳴る少し前に目が覚めた。
カーテンの隙間から差し込む光は、
昨日とほとんど同じ色をしている。
でも、胸の奥だけが、
ほんの少しだけそわそわしていた。
四番の背番号と、
リングを通るボールの軌道が、
まだ頭の中に残っている。
「おはよう」
キッチンから、義母の声。
「おはようございます」
いつもどおりのやりとり。
でも、
今日は少しだけ違うことをしてみようと、
テーブルにつきながら思った。
「昨日、バスケ部の試合見たって言ってたわよね」
味噌汁をよそいながら、義母が言う。
「うん」
「テスト前なのに、偉いわね。ちゃんと息抜きもできて」
一瞬、『ごめんなさい』が喉まで出かかった。
でも、昨日の瑠奈との練習を思い出す。
〝『ごめん』と『大丈夫』は禁止ワード〟。
「……ありがとう」
小さな声で、それだけ言ってみた。
義母が、意外そうにこちらを見た。
「え?」
「息抜き、してもいいって、言ってくれて。ありがとうございます」
自分で言いながら、顔が熱くなる。
義母は、少しだけ目を瞬かせてから、
ふっと笑った。
「別に、そんな大袈裟にするようなことじゃないけど」
箸をとりながら、続ける。
「私も、高校のときは部活ばっかりだったしね。勉強の合間に、何か楽しみがあるのは悪いことじゃないわよ」
「部活、してたんですか?」
「うん。吹奏楽。トランペットを少しね」
初めて聞く話だった。


