指で示したのは、途中の一行。
「〝今日まで生きてきたんだよって言ってくれた声が、今も耳の奥で鳴ってる〟」
そこは、
自分でも書きながらちょっと泣きそうになった部分だ。
「これ、歌詞にするときは、もう少し短くしたほうがいいかもだけど」
「ですよね」
「でも、芯はここにある気がする」
そう言われて、少しだけ胸が温かくなる。
「で、ここの、〝ごめん 帰ってって言ったくせに〟は……」
「それは没で」
食い気味に遮る。
「そこ歌わされたら、私も先輩もおそらく死にます」
「俺の黒歴史を楽曲化するのは、もうちょっと仲良くなってからにしよう」
春日井先輩が、苦笑い混じりに言って、
みんなで笑った。
「とりあえず、〝今日まで生きてきたんだよ〟をサビの頭に持ってきて。Aメロは川沿いのこと、Bメロは体育館とか病院のこと、って感じかな」
美由紀さんが、構成を考え始める。
「曲の全体は、ゆっくり立ち上がって最後ちょっとだけ走るイメージ」
「走ったら先輩の足が心配です」
「足首基準でテンポ決めないで」
口では文句を言いながら、
春日井先輩はもうギターでコードを探り始めていた。
その横顔を見ていたら、胸の奥がきゅっとなる。
――この人のギターで、自分の言葉が鳴るんだ。
そう思ったら、
急に『ちゃんと書かなきゃ』という気持ちが、
少しだけ『ちゃんと書きたい』に変わった。


