◇
ノートの前で固まっている私を、
部屋の時計の秒針だけが追い越していく。
「歌詞って、どう始めればいいんだろ」
ありがちなやつを試してみる。
「あの日の空は青かった」
書いた瞬間、自分で吹き出しそうになった。
「誰の〝あの日〟だよ……」
中三の卒業式か。
川沿いの夜か。
先輩に初めて空き教室で聴かれた日か。
〝あの日〟が多すぎて、
逆に嘘っぽく感じてしまう。
ぐしゃ、と消す。
消しゴムのカスだけが、やたら増えていく。
机に突っ伏したくなったとき、
頭の中にふっと浮かんだ言葉があった。
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