放課後の音楽室。
春日井先輩が、
コード練習の合間にぽろっと言った。
「せっかくバンド組んだんだしさ。コピーだけで終わるの、もったいなくない?」
「オリジナル曲を作るってこと?」
「そう。メロディとコード、歌詞」
「つまり全部じゃん」
即座にツッコんだのは瑠奈だった。
「そんなフルコース、急に出されてもど素人は困るんですけど」
「大丈夫。コードとアレンジは、俺と美由紀でなんとかするとして」
春日井先輩は、こちらを見た。
「歌詞は、山谷さんに書いてほしい」
「……え」
ギターの音が頭から抜け落ちるくらいには、
びっくりした。
「なんで私なんですか」
「歌うの、山谷さんでしょ」
当たり前みたいに言う。
「〝今日もちゃんとここにいるね〟って言えた人が書く言葉、聴いてみたいから」
あの日のフレーズを、
自分が一番好きだったことを思い出す。
「でも、書いたことないし」
「初めての歌詞って、二度と手に入らないからさ」
その言い方は、ずるい。
「プレッシャーをかけてます?」
「期待してます」
同じようでいて、全然違う言葉。
美由紀さんも、
ドラムスティックを指でくるくる回しながら言う。
「歌う人が自分の言葉で歌えたら、一番強いよ。息継ぎしたい場所も、自分で決められるし」
「……やってみます」
気づいたら、そう答えていた。


