「言っとくけど」
スティックを指でくるくる回しながら、
きっぱり言う。
「温人は、ただの幼馴染。兄弟みたいなもんよ」
「え、マジで?信用してよし?」
瑠奈が、素で驚いた顔をする。
「マジ。信用しろ」
美由紀さんは、少しだけ肩をすくめる。
「小学校のころから見てるしね。鼻水垂らしてた時代から」
「今の春日井先輩にそれ言えるの、たぶん美由紀さんだけです」
思わず口を挟むと、美由紀さんが笑う。
「でしょ?」
「でもさ、〝兄弟みたいな幼馴染〟って、漫画だとだいたい途中で恋愛フラグ立つやつ」
「だから漫画基準で話すなって」
美由紀さんは、
スティックの先で瑠奈の額を軽く突く。
「私が見てるのは、〝プレイヤーとしての春日井温人〟だから」
その言い方が、妙にかっこいい。
「バスケでも、ギターでも。温人がどこまでやれるか、身近で見てたいってだけ」
「それさ」
瑠奈が、ニヤニヤしながら言う。
「〝好き〟って言い換えられるんじゃない?」
「違う」
即答だった。
「恋愛の〝好き〟と、そうじゃない〝好き〟を一緒くたにしないでほしい」
少しだけ真剣な目になる。
「私が温人のこと好きなのは、たぶん〝家族〟とか〝チームメイト〟とか、そういうカテゴリ。キスとか絶ッ対無理」
「最後の情報いらなくない?」
三人で笑いながらも、
その言葉に私は、
ほっとしている自分に気づいた。
胸のどこかで、
ずっと引っかかっていた小さな棘が、
少しだけ抜けた気がする。
――美由紀さんは、
春日井先輩のこと、恋愛的には見ていない。
その事実が、
すぐに何かを変えるわけじゃない。
でも、
自分の気持ちを覗き込むスペースが、
少しだけ広くなった。


