カツン、カツン。
「お待たせしました、ギター担当、春日井です」
春日井先輩が、
ギターケースを背負って現れる。
「本当に買ったんだ」
美由紀が目を丸くする。
「中古だけどね。楽器屋で、〝初心者が文化祭で高校デビューしたいんですけど〟って言ったら、これ出てきた」
「説明の仕方」
美由紀が呆れたように笑う。
「で、今日は何からやる?」
春日井先輩が、音楽室の鍵を掲げる。
「顧問の先生から、練習してもいいって許可とったから、中入っていいよ」
「仕事早い」
「俺、交渉だけは得意だから」
そう言って、鍵を回す。
音楽室の中は、
いつもより少しだけ広く見えた。
ドラムセット。
アンプ。
マイクスタンド。
全部、
『見る側』じゃなくて『使う側』の景色だ。


