「言ってみれば?」
春日井先輩は、あっさり言った。
「〝また途中でやめるんじゃないの〟って言われたら、なんて返せばいいですか」
「〝それでもやりたいからやる〟って返せば?」
あまりにシンプルで、拍子抜けする。
「それ、通用しますかね」
「さあ」
春日井先輩は、少し笑う。
「でも、〝やりたい〟ってちゃんと言えるの、かっこいいと思うよ」
空き教室の窓から差し込む光が、少しだけ眩しかった。
「……分かりました」
自分でも驚くくらい、はっきりした声が出た。
「お母さんに、話してみます」
「マジで?」
「マジで」
言ってしまった。
もう戻れない。
「じゃあ、俺も、ちゃんと先生とコーチに話すわ」
「バスケのこと、ですか」
「うん。〝バンドやるんで、バスケは一旦休憩します〟って言ったら、殴られそうだけど」
「やめてください」
「冗談、冗談」
でも、その目は冗談だけじゃなかった。
「ちゃんと、〝自分で決めた〟って顔で話してくる」
それはきっと、
『バスケの道を諦める』決断と、
『新しい場所に立つ』決意、
両方を含んだ言葉なのだと思った。


