「まさか本当に来ちゃうなんて……」
校門の前で私はため息をついた。
リアンは朝日を背に、堂々と歩いてくる。
背すじはピンと伸び、高貴なオーラがあふれていて、まるで通学路でパレードみたいだった。
「天音、なにをキョロキョロしている?」
不思議そうなリアン。
「いや……周りの視線が気になって」
「視線? そんなもの気にしてどうする」
……だめだこりゃ。
王子様と庶民じゃ感覚が違いすぎる。
さっきから、リアンのことをチラチラ見ている人達がいることに気がついていないの?
「それより、学校では私のこと呼び捨てにしないでよね?」
「なぜだ?」
やっぱりわかってない。
「いきなり“天音”なんて呼んだら、みんなビックリしちゃうよ」
「では……。小天音 (シャオ・ティエンイン)」
「え、シャオ……? その意味は?」
「かわいい、天音ちゃん。だな」
「な、なにそれ!」
急にかわいいって言われて顔が熱くなる。
「これもダメなのか? 若い娘を呼ぶには一般的なのだが」
「あ、そうなんだ……」
ちょっとガッカリしたような、安心したような……複雑な気分。
「普通に“天音さん”でいいよ!」
しばらく考えたあと、リアンはぼそっと言った。
「……つまらん」
「つまんないって言うなー!」
そんなやりとりをしていると、生徒たちのざわめきが広がった。
「ねえ、あの人イケメンすぎ!」 「外国の王子みたいじゃん!」 「何者だよアイツ!」
リアン、注目されすぎ!
王子様オーラは隠せないみたい。
「目立たないでって言ったよね?」
「目立つ気などないぞ。私はただ、堂々と歩いているだけだ」
――いや、それが目立つんだよ!

