「ま、まさか本気で行く気なの?」
私は朝食の皿を洗いながら、リアンを見上げた。
真っ白なワイシャツにきっちりネクタイ。
まるでファッション雑誌のモデルみたいに決まっていて、朝日を浴びた姿はちょっと神秘的ですらある。
「もちろんだ。せっかく日本にいるのだ。日本の学生生活を体験せねば」
「体験って……行くのは中学校だけど!?」
リアンは鏡の前で、後ろへ流した三つ編みを整えている。
「日本の学生服というのは、王族服に負けぬほど威厳があるな」
――たしかに似合いすぎていて、何も言えない。
それにしても、パパが昔の中学の制服をまだ持っていたとはびっくりだ。
パパが中3のときに制服が新しくなって、
どうしてもそのデザインが欲しくて、おばあちゃんに頼み込んで買ってもらったらしい。
そのせいで「思い出の制服だから捨てられない」って保管してたんだって。
なんともパパらしい。
そして今、その大切な制服をリアンが着ている。
それをあっさり貸すパパもパパだけど……。
「天音、リアンくんも、のんびりしてると遅刻するぞ〜」
自分もパンケーキをほおばりながらパパが声をかけてくる。
リアンの姿を見ると目をぱちくり。
急に衝撃を受けたみたいに立ち上がり……、
「リアンくん! なんてかっこいいんだ! 僕が着た制服とは思えないよ〜!」
「そうか?」
パパのほめ言葉も、リアンはいつものように冷静だった。
「やっぱり王子様だけあって、庶民の制服を着ても映えるなぁ〜」
「パパ、それほめすぎ!」
呆れる私を無視して、パパは急に手を打った。
「よし! リアンくんと天音、並んで並んで!」
「なんで?」
「記念写真だよ〜! うつくしい王子様が来ているんだから!」
ウキウキしながらパパがカメラを取りに行こうとしたので、私は慌てて止めた。
「ちょっと待ってよ! 遅刻するってば!」
「えぇ〜!」
「えぇ〜じゃない!」
がっくり肩を落とすパパ。
それを見てリアンが吹き出した。
「ふふっ。天音もパパさんも、とても仲が良いのだな」
いや……朝から疲れるよぉ!

