駅からアパートまでは歩いて15分ほどの距離にあるが、歩いている間にじわりと額に汗が滲んできた。 背中には汗の玉が流れていき、黒い半袖シャツが背中にべったりと張り付いている。 坪井妖は右手の甲で額の汗を拭い、左手でジーンズの後ろポケットから部屋の鍵を取り出した。辺りは刺々しい蝉の声が響き渡っていて、田舎の蝉の鳴き声とはやっぱり違うなとぼんやり考える。 それよりも早く部屋に入って冷房にあたりたい。 鍵穴に鍵を差し込んだときだった。 「妖!」