無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます

 《待って。偶然二回で終わらなかった世界線が来たってこと?》
 「言い方が大げさだから」

 ため息混じりに返しながら、バッグをソファの横に置く。
 頭では〝たまたま〟と理解しているのに、言葉にすると少しだけ説得力が落ちる。

 《で? 職場で再会して、どうなの》

 「ただのインターン生だから、どうもこうもないけど。ペースを乱されるというか……」
 《だろうね。私は天音の話からしか彼を知らないけど、正反対っぽいもんね》

 彼はそれをおもしろがっているように見受けられる。
 天音が彼に仕事を教える役目を仰せつかることも多く、お昼もなぜか天音のあとを追ってくるためふたりになるときが多い。必然的に一緒にいる時間が増えている。

 先週の水曜日は、天音お気に入りのラーメン屋にもついてきた。またトッピング全部のせかと思いきや、悩む素振りもなくパパッと厳選。おいしそうに食べていたと理世に報告する。

 《気になってるわけだ》
 「そういうわけじゃないの。ただ、やたら話しかけてくるし、距離が近いというか……」
 《面倒だけど気になってるんだね》

 即座に否定しようとして、言葉が止まる。
 面倒なのは事実。でも、それだけでは説明しきれない感覚は、たしかにある。けれど――。