無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます


 午前中のフロアは、いつもより少しだけ慌ただしかった。
 月初で書類の確認が多く、電話もひっきりなし。天音は自分の席で黙々と手を動かしていた。
 備品の発注状況を確認し、チェックリストに目を通す。ひとつずつ終わっていく作業に、小さな達成感が積み重なっていく。忙しいとはいえ、こういう時間は好きだ。

 (よし、予定通り)

 画面の右下の時計をちらりと見て、次にやることを頭の中で整理する。余計なことが起きない時間。理想的だと思ったそのとき。

 「みんな、少し手を止めてもらえる?」

 フロア全体に伸びやかな声が響き渡る。
 顔を上げると、杉村が颯爽と歩いてきた。ミモレ丈のセミフレアスカートの裾がひらひらと揺れる。フロアの真ん中で立ち止まった彼女は、後ろに男性を従えていた。

 「今日から一緒に働くインターンの方を紹介します」

 彼女の言葉で、先週そう言われたことを思い出した。
 杉村の後ろにいる男性を見ようと、みんながいっせいに首を伸ばす。

 「各自、サポートを受け持つときにはお願いね」

 そう言ってから、杉村は一歩横にずれた。

 「自己紹介を」