無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます

 照れたように視線を逸らすその横顔を見て、天音はふと、幹人と一緒に食卓を囲む未来を自然に想像している自分に気づく。
 そのときだった。

 「天音さん」

 名前を呼ばれて顔を上げると、幹人が箸を置き、静かに立ち上がる。そして、ポケットから小さなケースを取り出してテーブルの上に置いた。
 一瞬、意味がわからず瞬きをする。

 「……え?」

 ケースが開かれ、指輪が照明を受けてきらりと光る。

 「やっぱりちゃんと渡しておきたくて」

 年下だとか勢いだとか、そういうものがいっさい入り込む余地のない目で、真っすぐこちらを見る。

 「一緒に生きていくって決めた人に、形として残るものを渡したい」

 式の予定があるわけじゃない。未来の約束をしただけ。だから、指輪のプレゼントなんてされるとは思ってもいなかった。
 胸がいっぱいになって言葉が詰まる。うれしくて泣きそうで、でも笑ってしまいそうで。

 「……やっぱりずるい」
 「なにがですか」
 「こんなの、喜ばないわけないじゃない」

 幹人は少しだけ、ほっとしたように微笑んだ。