無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます

 そう言いきり、ブロッコリーを鍋から引き上げる。
 横顔に向けられる視線がまだ熱を帯びている気がして、天音は深呼吸をひとつした。

 「ワイン、開けますね」

 幹人は棚からボトルを取り出し、慣れた手つきでコルクを抜いた。
 ぽん、と小さく乾いた音がして、天音は思わず目を細める。

 「ちょっと贅沢ね」
 「今夜はいいんです」

 そう言って笑う顔は、変に気負っていない。
 火を止めたハンバーグを皿に移すと、ふっくらと厚みがあり表面はこんがり、中はやわらかそうだ。デミグラスソースをかけると、湯気と一緒に食欲をそそる香りが立ち上る。
 テーブルに料理とグラスを並べ、向かい合って座る。

 「じゃあ、乾杯」
 「乾杯」

 グラスを軽く合わせる音は、夜のはじまりを告げるみたいだ。
 ひと口食べて、思わず声が漏れる。

 「おいしい」
 「ほんとですか」
 「うん。幹人くんが作ったデミグラスソースが絶品」
 「よかった」