無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます


 その日の仕事を終え、エレベーターに乗る。スマートフォンを確認すると、幹人から【昇進おめでとう!】というメッセージが入っていた。
 今は彼と一緒に仕事を頑張るとき。改めてそう思いながらエレベーターを降りつつ返信を打っていると、後ろから天音を呼び止める声が追いかけてきた。

 「天音! ちょっと待って!」

 足を止めて振り返ると、声の主は天音の元彼、坂口だった。小走りで駆け寄ってきた彼が、天音の前で立ち止まる。

 「辞令、見たよ」
 「あ、うん」
 「おめでとう。主任なんてすごいじゃん」

 坂口が、鼓舞するように腕をパシッと軽く叩く。

 「ありがとう」

 そう返しながら坂口に促され、エントランスの隅に避ける。そこは人の流れから少し外れていて、立ち止まるにはちょうどいい場所だ。

 「お祝いに行かね? 再会と昇進祝い、同時にやろうぜ」
 「ごめん。それはちょっと……」
 「急だから困る?」
 「ううん、違うの」

 幹人以外の男性とふたりきりで出かけるわけにはいかない。

 「あぁ、あれか」