無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます


 お昼から戻ってすぐ、天音は杉村に呼ばれた。にこやかな表情から、なんとなく用件を察する。社内ネットワークの掲示板で正式に発表されたばかりだ。

 「寺崎さん、これからの活躍にも期待してます」

 立ち上がった天音に杉村が辞令を差し出した。そこには総務部総務課主任と記されている。

 「謹んでお受けします」

 天音が両手で受け取ると、周りで拍手が広がっていく。

 「寺崎さん、頑張って!」
 「よっ、デフォルト主任!」

 あちこちから上がる声に一つひとつ頭を下げ、収束したところで席に座った。
 改めて辞令を見て、本当に主任になったのだと実感する。これからはデフォルトだけではなく、その先を見据える必要がある。みんなをまとめる力もまだ不十分だから、いっそう頑張っていかなければと決意を新たにする。

 (……幹人くんとの将来は、いったん脇に置いておこう)

 天音ひとりの想いだけでどうにかなるものではない。そもそもまだ付き合いはじめたばかり。今はまだそのときではないのだ。
 ふと顔を上げると杉村がこちらを見ていて、穏やかな表情でありながら強く頷かれ、天音も頷き返すことで応えた。