無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます

 天音は足を止め、しばらくその様子を眺めた。触れはせず、ただ見るだけ。それがちょうどいい距離だった。
 通路を挟んだ反対側では、猫たちがそれぞれ好き勝手な時間を過ごしている。丸くなって眠る子、こちらを一瞥したきり興味を失ったように目を閉じる子。その中でひときわ人懐っこいアメリカンショートヘアがガラス越しに小さな前足を伸ばしてきたため、天音は思わず笑みを零した。

 (かわいい……)

 反則級の愛らしさにメロメロになるのは毎度のことだが、やはりこちらも眺めるだけに留める。好きだけど、距離を置いて眺めるのがちょうどいい。

 「抱っこしてみませんか?」
 「いえ、大丈夫です」

 ゆっくりと首を横に振る。店員に勧められて遠慮するのも毎度である。見るだけで十分なのだ。

 (さてと、そろそろ帰ろうかな)

 癒しの摂取は十分。満足した天音がそろそろ出ようと踵を返したそのとき――。
 足元をひやりとしたものが横切った気がした。視界の端で、ありえない動きがする。

 (え?)

 反射的に足元へ視線を落とした瞬間、息を呑んだ。
 床を這うように進んでいたのは、犬でも猫でもない。艶のあるカラフルな体に、ぎょろりとした大きな目。ゆっくり、でも確実に方向を定めながら歩く、大きな爬虫類だった。