無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます

 注文を終えると、コーヒーの香りが漂ってくる。ガラス越しの冬の光が、テーブルの上にやわらかく落ちていた。

 「寺崎さんにランチを誘われるの、もしかして初めてよね」
 「そうですね」

 部署の人と何人かで食べることはあるが、ふたりきり、それも天音から誘ったのは今日が初めてだ。

 「今日は久しぶりに加地くんが出社してるから、てっきり一緒に食べるものだと思ってたけど」

 そう言ったときの杉村は責めるでもからかうでもない、どこか探るような笑みを浮かべていた。目尻がほんの少しだけ細くなっている。
 天音は思わず、息を呑む。

 (……見透かされてる?)

 幹人にランチに誘われたとき、まだ約束も取りつけてもいないのに杉村の名前を出して断った。これ以上、彼に近づくのはよくないと思ったから。元気そうな顔を見てほっとすると同時に、一線を引かなければならないと思ったからだ。

 「いえ……」

 言いかけて、言葉が途切れる。なにを否定すればいいのか、自分でもわからなかった。

 ちょうどそのタイミングで、クラブハウスサンドが運ばれてくる。トーストされたパン、ベーコン、チキン、レタス、トマト。紙に包まれていて、両手で持たないと崩れそうだ。