無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます


 翌週の月曜日、総務部はいつも通りにはじまり、いつも通りに終わった。
 幹人は今日も来ていない。課題が佳境だと言っていたから仕方がない。

 (って、仕方がないって、なに)

 頭を振って雑念を振り払いながら、帰り支度を終えてオフィスを出た。
 エントランスに向かう途中で、少し早足の影が横切る。

 「あ! 寺崎!」

 振り返ると、鈴川がいた。
 ネクタイを少し緩め、片手にはコンビニの袋。どう見ても、落ち着いている様子ではない。

 「あー、ちょうどよかった!」

 心底ほっとした顔でそう言われ、天音は足を止めた。

 「どうしたの?」
 「いや、ちょっと困っててさ」

 鈴川は袋を持ち上げて見せる。

 「これ、加地の家に差し入れしようと思ってたんだけど」
 「加地くんに?」
 「そう。課題でほぼ缶詰らしくて。で、今から行こうと思ったら、急ぎの修正依頼が入っちゃってさ」

 言いながら、鈴川は頭をがしがしと掻く。