無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます


 週末の午後、天音は少しだけ迷ってから、いつもより歩きやすい、踵がぺったんこのショートブーツを選んだ。幹人に『考えとく』と言った二日後、【初詣、付き合ってあげる】とメッセージで返事をしていた。
 天音が付き合わなくても、幹人なら一緒に行く相手などすぐに見つかる。あのとき彼が誘ったのは、その場の成り行きだ。
 なのに、ほかの人――それも女性を誘うところを想像して、気づいたらそう返信していた。

 (私、なにやってるんだろう)

 この頃、自分で自分がわからない。
 待ち合わせたのは、幹人が指定した神社の最寄り駅。改札を出たところで、彼はもう待っていた。黒いコートのポケットに手を入れ、スマートフォンを眺めている。見慣れたはずの姿なのに、休日の私服だというだけで少しだけ印象が違った。
 マフラーを巻きなおして彼の前に立つ。

 「お待たせ」
 「俺も今、来たところです」

 顔を上げた瞬間、目が合って、どちらからともなく視線を外す。仕事のときならなんでもないはずなのに、間に流れる空気が微妙に違う。
 そのときふと、幹人が目を瞬かせた。

 「そういう色も似合いますね」

 唐突に褒められ、すぐに言葉が出てこない。天音はレトロな感じがする、くすんだブルー系のチェック柄スカートを穿いていた。普段モノトーンばかり着ている天音が、絶対に選ばない色だ。