無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます

 「あ、はい。ちょっと頭を切り替えたくて」
 「そう」

 杉村は自分もコーヒーを選び、機械の前に並ぶ。一瞬の沈黙のあと、ちらりと天音を見た。

 「今日は朝から、心ここにあらずって感じね」
 「……すみません」

 責める口調ではなく、事実を静かに指摘されただけなのに胸がちくりとする。

 「正月休み疲れ?」
 「いえ、そういうわけでは……」

 言葉が途切れた。
 杉村はそれ以上問い詰めず、缶コーヒーを手に取る。

 「まあ、年明けだしね。気持ちが追いつかないこともあるわ」

 そう前置きしてから、少しだけ声を落とす。

 「でも、寺崎さんはわかりやすいタイプよ。集中してるときは周りが見えなくなるくらいなのに」

 思わず顔を上げると、杉村はやわらかく笑って続けた。

 「今日は逆。仕事はしてるけど、心がべつのところにある」

 図星だ。言い返そうとしても、言葉が見つからない。