無難に生きたいのに、全力すぎる彼が構ってきます


 年が明けて正月休みも今日で終わり。家の中にはいつもの生活音が戻りつつあった。
 クリスマスも正月も家族で過ごすことが多い天音は、今シーズンも例年通り。『たまには女ふたりでクリスマスディナーでもどう?』と理世に誘われたが、その彼女が風邪をひいてしまい残念ながらキャンセルとなった。

 なにかと騒がしい幹人は大学の課題で忙しいらしく、あまり顔を見かけないまま年が改まり、元旦に【あけましておめでとうございます】というメッセージが届いた。

 台所からは煮物の匂いが漂い、テレビでは早くも正月特番の再放送が流れている。
 リビングのテーブルを囲み、両親と向かい合って座るこの光景は、子どもの頃から変わらない。落ち着くはずの場所なのに、その夜の空気はどこか張り詰めているように感じた。

 「天音」

 湯呑を置いた父、正信が咳払いをひとつする。
 この前置きが出たときは、なにか大切な話があるときだ。

 「お前ももう二十八歳だし、そろそろ将来のことを考えてもいい年だと思ってな」

 予感は当たった。その先に続く言葉は察しがつく。結婚と言いたいのだろう。

 「急にどうしたの」
 「急じゃないわよ」