ぽっちゃりな私を好きになるなんて、国宝級イケメン俳優おかしくないですか!?

「改悪だぁぁぁぁぁ!!!」

 楽屋に叫び声が響いた。

 メイクさんがビクッとする。

 マネージャーが天井を見る。

「あかりさん、落ち着いて」

「落ち着けるかぁぁ!!」

 あたしは台本をバン!と机に叩きつけた。

「なんで!?」

「なんで命がけでイケメンを助けたのに恋愛対象外なの!?」

「おかしくない!?」

 マネージャーが困った顔をする。

「いやでも、日本のドラマって昔からヒロインは美形に決まってる。

 そういうものだから……」

「そういうものじゃない!!」

 違う。

 違う違う。

 この作品の良さは、そこじゃない。

 見た目じゃなくて。

 派手じゃなくて。

 《《一緒に命をつないだ》》から恋になる話だった。

 ぽっちゃりで、

 不器用で、

 でも優しい。

 そんなあかりが報われるから良かったのに。

 なのに、

 なんで最後。

 キラキラ美人が全部持ってくの!?

「作者さん泣くよ!!」

 思わず言った。





 空気が止まる。

 スタッフが目を逸らした。

 マネージャーが小さく息を吐く。

「……佐藤あかりさん」

「なに」

「作者さん、まだ脚本見てない」

 …………。

 え。

「うそ」

「制作側の判断」

 胸の奥が、ざわっとした。

 嫌な感じ。

 すごく嫌な感じ。

「会わせて」

「え?」

「作者さんに」

 マネージャーが慌てる。

「いやいやいや、そんな簡単に――」

「会わせて」

 低い声が出た。

 極道の娘モード。

「推しを守る」

 空気が静まる。

「……あたし、絶対これ許さない」

 その時。

 コンコン。

 楽屋のドアがノックされた。

「失礼しまーす」

 入ってきたのは――。

 今回、イケメン刑事役の俳優。

 神宮寺 湊《じんぐうじ みなと》。

 今をときめく国宝級イケメン。

 顔が良すぎて腹立つレベル。

 でも、

 なぜか、

 ちょっと困った顔をしていた。

「……その話」

 彼が、小さく言った。

「俺も、変だと思ってた」

 ――え?