ぽっちゃりな私を好きになるなんて、国宝級イケメン俳優おかしくないですか!?

 数か月後。

「――ドラマ化、決まりました」

「……え?」

 あたしは固まった。

 目の前には、プロデューサー。

 そして。

 推し作家さん。

 オンライン会議の画面越しでも分かる。

 めちゃくちゃ緊張してる。

『ほ、本当に……?』

 震えてる。

 うわ。

 かわいい。

 守りたい。

「もちろんです!」

 あたしは身を乗り出した。

「この作品、絶対いけます!!」

 冷凍庫シーン最高。

 報われない恋、最高。

 ぽっちゃり刑事、最高。

 なにより――。

 ちゃんと、人を好きになる話だった。

「主演、やります」

 勢いで言った。

 周囲がざわつく。

「えっ、佐藤さんが!?」

「やります」

 即答。

「だって、あかり役、あたししかいないでしょ?」

 ……ちょっと図々しかったかも。

 でも。

 みんな笑ってた。

 推し作家さんなんて、泣きそう。

『あの……本当に……ありがとうございます』

 あ。

 ダメ。

 この人、好き。

 作家として。

 全力で応援したくなる。

 そこからは、快進撃だった。

 書籍化。

 コミカライズ。

 そして――。

 アニメ化。

 推し作家さん、売れた。

 近況ノートのコメント数も、フォロワー数も爆増。

 よかった。

 本当に。

 よかった。

 そして。

 ドラマ化。

 台本が届いた。

 タイトルも変わった。

 《お疲れ様刑事》。

 ちょっとダサいけど。

 まあ、ドラマっぽい。

 わくわくしながら開く。

 ページをめくる。

 そして。

 数秒後。

「……は?」

 止まった。

 いや。

 待って。

 ちょっと待って。

 え?

 イケメン刑事が――。

 恋してる相手。

 違う。

「ひかり……?」

 誰。

 その美人。

 新キャラ?

 え。

 あかりじゃないの?

 ぱらぱらめくる。

 嫌な予感。

 冷凍庫シーン。

 ある。

 でも。

『寒い……』

 震えるイケメン刑事。

 そこに。

『大丈夫です!』

 あかりが駆け寄る。

 そして。

 自分の上着を脱ぎ。

 震えながら。

 温める。

 ――まで一緒。

 なのに。

 次のページ。

『ひかり……会いたかった』

「え?」

 え?

 いや。

 待って。

 お前。

 そこ。

 恋に落ちる場所だろ!?

 さらに次。

 あかり。

 殴られる。

 あかり。

 海に捨てられる。

 あかり。

 盾になる。

 あかり。

 報われない。

「え……」

 最後のページ。

 イケメン刑事と美人刑事が、腕を組む。

『お疲れ様~、お先です』

 その横で。

 傷だらけのあかり。

 ひとり。

 ぽつん。

 ナレーション。

『今日も、誰かのために働く――お疲れ様刑事』

 …………。

 しばらく。

 動けなかった。

 そして。

「改悪だぁぁぁぁぁ!!!」

 楽屋に叫び声が響いた。