ぽっちゃりな私を好きになるなんて、国宝級イケメン俳優おかしくないですか!?


 いや、わたし……たしかにぽっちゃりだけど!?

 ここまでじゃない!!

 でも――。

「……あれ?」

 読み進める手が止まらない。

 太った刑事・佐藤あかり。

 食いしん坊。

 運動苦手。

 空気読めない。

 イケメン刑事の足を引っ張る。

 なのに、

 なのに――。

「え、めっちゃいい子……」





 あかり、

 すっごく優しい。

 コンビニで迷子を助けて、

 被害者家族に寄り添って、

 怒られても、へこみながらも頑張る。




 しかも、

 描かれているご飯が、全て美味しそう。

 なんか……好きな小説だなあ。



 そして、

 業務用冷凍庫で事件が起こる。

 黒ずくめの犯人たちに捕まったイケメン刑事とぽっちゃりあかり刑事。

 冷凍庫の中では凍える寒さ。

 助けは来ない。

 イケメン刑事は低体温で倒れそう。

 その時――。

『こっち来なさい!』

 太ったあかりが、叫ぶ。

『あたし、脂肪あるから!!』

「ぶっ!!」

 思わず吹き出した。

 でも。

 次のページで泣いた。

『死なないで』

 震えながら。

 自分の服を脱いでイケメン刑事を体で温め続けるあかり。

 寒いのに。

 怖いのに。

 ずっと。

 笑って。

『大丈夫、大丈夫だから。 

 眠っちゃダメ。

 何か話そう。

 そうだ、しりとり……しよう。

 わたしからね。

 うーんと、イケメン。

 あっあっ、ん、がついちゃった。

 私の負けね。

 眠ったらだめー。

 死ぬよ。

 えーと、こんなときは。

 あったかい食べ物思い出そう。
 
 みそしる! 

 はーい、るがつく言葉さがして』

 って。

 イケメン刑事を励ます。

 ……なにこれ。

 好き。

 しかも、

 そこから、

 イケメン刑事、完全に恋してる。

 「ルビーの指輪。

 生きて帰れたら、あかり刑事に婚約指輪としてルビーの指輪を贈る

 受け取ってくれるかな?」

 「もちろん。 眠っちゃダメ!」


 いい。いいわ。

 うっとりする。


 二話。

 三話。

 ずーーーーっと、イケメン刑事は

 命の恩人のあかりだけ見てる。

 それも恋する瞳で。

『無理すんな』

『お前、ちゃんと食ったか?』

『危ないから離れるな』

 ……尊い。

 めちゃくちゃ尊い。

「これ、ドラマ化してほしい……」

 ぽつりと呟いた瞬間。

 あたし、思い出した。

 プロデューサーの言葉。

『面白い話があったら持ってきて』

 ――あ。

 これ。

 これだ。

 あたしは、立ち上がった。

「よし」

 決めた。

 推し作家、売れてもらう。

 絶対に。





 そして――、

 数か月後。

 あたしは、自分の行動を

 ちょっとだけ後悔することになる。