ぽっちゃりな私を好きになるなんて、国宝級イケメン俳優おかしくないですか!?

 涙が、止まらなかった。

 なんなの。

 この人。

 反則。

 そんな顔で。

 そんな声で。

 そんなふうに言われたら――。

「……ばか」

 気づけば、口から出ていた。

「主演俳優なんだから……、

 もっと自分を大事にしたほうがいいと思う」

 声が震える。

 すると、

 湊《みなと》が、小さく笑った。

「あかりに言われたくない」

 …………。

 言い返せない。

「でも」

 少しだけ真面目な顔になる。

「あかり、もう逃げない?」

 真っ直ぐな目。

 ああ。

 この人。

 本当に。

 逃がしてくれない。

 でも。

 嫌じゃない。

 むしろ――。

 嬉しい。

 泣きながら笑った。

「……条件があるの」

「条件?」

「作品を大事にして」

 湊が、すぐ頷く。

「もちろん」

「春野先生のことも……」

「守る!」

 即答。

「あと」

 深呼吸。

 言う。

「……あたし、簡単にかわいいとか信じないから」

 一瞬。

 湊が黙った。

 そして。

 ふっと笑う。

「じゃあ、一生かけて言う」

 …………。

 え。

「毎日言う」

「かわいいって」

「好きって」

「幸せにするって」

 ――無理。

 心臓が、

 死ぬ。

「そんな顔、反則だから……」

 ぽろっと言った瞬間。

 湊が少しだけ近づく。

「そっちも、反則だし」

 低い声。

「泣き顔、守りたくなる」

 ……だめ。

 もう。

 好き。

 完全に。

 好き。





 その数か月後――。

 ドラマ《お疲れ様刑事》は放送開始。

 そして。

 大ヒットした。

 SNS、

 大騒ぎ。

《あかり刑事、泣ける》

《冷凍庫回で号泣した》

《こんな恋愛初めて見た》

《ぽっちゃり女子の希望すぎる》

《イケメン刑事、あかりしか見てないの最高》

 しかも、

 問題だった最終回。

 原作どおりに変更された。

 傷だらけのあかり刑事。

 頑張りすぎる彼女へ、

 イケメン刑事が、そっと言う。

『お疲れ様』

『今度は俺が守る』

 その瞬間。

 SNS。

 大爆発。




《号泣》

《ここ数年で一番泣いた》

《あかりが報われてよかった》

《神ドラマ》

 そして。

 最終回放送後。

 生配信。




 視聴者数、過去最高。

 春野先生は緊張で固まり、

 あたしは笑い、

 湊はいつもの涼しい顔。

 司会が聞いた。

「最後に皆さんへ一言を!」

 春野先生、号泣。

「夢みたいですぅぅぅ」

 かわいい!

 そして。

 マイクが湊へ向く。

「神宮寺さんは?」

 その瞬間。

 湊が、こっちを見た。

 ……え。

 なんで?


 嫌な予感。


 全国生配信で、

 とんでもないことを言いそう。

「俺」

 静かな声。

「頑張りすぎる人、放っておけないんです」

 どくん。

「特に」

 一瞬。

 笑う。

「大好きな人なら、なおさら」

 …………。

 え。

 会場。

 静止。

 コメント欄。

 爆発。

《え!?》

《公開告白!?》

《相手誰!?》

 その時。

 湊が、

 さらっと、

 あたしの手を握った。

 そして、

「佐藤あかりさん」

 待って、

 待って待って。

 全国の、

 生放送だよ。

「――俺と結婚してください」

 ――は?