ぽっちゃりな私を好きになるなんて、国宝級イケメン俳優おかしくないですか!?

 ――やっぱり。

 こうなるよね。

 スマホを閉じた。

 胸の奥が、じわっと痛い。

《釣り合わない》

《話題作り》

《湊がかわいそう》

《どうせ売名》




 知ってる。

 慣れてる。

 昔から、

 かわいい子の横では、笑い担当だった。

 恋愛ドラマでは親友役。

 告白されるのは美人。

 あたしは応援係。

 《いい人》で終わる。

 だから。




(勘違いしちゃダメ)

 ちゃんと分かってる。

 湊《みなと》は優しい。

 優しいから。

 放っておけないだけ。

 そんなの――。

 恋じゃない。

 むしろ、同情!




 翌日。

 撮影現場。

「おはよ」

 いつもの湊。

 いつもの笑顔。

 でも。

 あたしは、一歩下がった。

「おはようございます」

 少しだけ距離を取る。

 湊が、止まる。

「……あかり?」

 初めて、

 名前で呼ばれた。

 胸が痛い。

 でも。

 ダメ。

 近づいたら。

 期待しちゃう。

「湊くん」

 笑う。

 仕事用の笑顔。

「ねえ、わたしたち……少し、距離置こう」

 空気が止まった。

「……なんで?」

 低い声。

 いつもより、少しだけ怖い。

「ネット見たでしょ」

 わたし、笑う。

 明るく。

 傷ついてないふり。

「主演俳優に迷惑かけられないよ」




「迷惑だって?」

 湊の顔が変わった。

「誰が言った?」

「いや、わたし、普通に見て分かるじゃん」

 自分を指さす。

「ぽっちゃり」

「美人じゃない」

「恋愛枠じゃない」

 言いながら、

 少しだけ。

 苦しい。

 でも、

 慣れてる。

「だから――」




 その瞬間。

 ぐいっ。

 腕を引かれた。

「っ!?」

 気づけば。

 人気のない廊下。

 壁。

 近い。

 近い近い近い!!

 湊の顔。

 近すぎ!!

「それ」

 低い声。

 真っ直ぐな目。

「迷惑って誰が言った?」

 どくん。


 湊の顔が、さらに近づく。

「俺、あかりのこと、

 恋愛枠じゃないって、

 かわいくないって、

 一回も思ったことないんだが」




 ――無理。

 心臓。

 壊れる。

「あかりって、

 笑うとかわいいし。

 美味しそうに食べる顔、

 かなり、好きだし。

 人のために怒れるところに

 惚れてる」



 一瞬。

 息を吐く。

「全部、好きなんだ」

 その声。

 ちょっと苦しそうだった。

 湊は顔をあげた。

「なのに……」

 初めて見る顔だった。

「なんで逃げるの?」

 胸が、ぎゅっとなった。




 その時だった。

「……湊くん」

 後ろから声。

 振り向くと

 湊のマネージャーの白川さん。

 顔色が悪い。

「あの、言いにくいんだけど。

 ここに、週刊誌のカメラマンが入り込んでました」

 一瞬。

 空気が変わる。

「今、写真、撮られました」

 …………。

 「スクープ撮ったぞ! って、

 走っていきました」

 え?!

 今の獲られた?

 ……終わった。