ぽっちゃりな私を好きになるなんて、国宝級イケメン俳優おかしくないですか!?

 撮影初日。

 あたしは知ることになる。

 神宮寺湊《じんぐうじみなと》が――。

 想像以上に《《甘い男》》だったことを。


 朝イチ。

 スタジオ入り五分。

「寒くない?」

 いきなり毛布。

「え?」

「冷えるでしょ」

 ぽん。

 肩にかけられる。

 スタッフがざわつく。

 いやいやいや。

 主演俳優が!?

 そんなことある!?

「大丈夫、自分でできます!」

「知ってる」

 湊がさらっと言う。

「でも、やりたいんだ」

 …………。

 え?

 なにそれ。

 優しくなんかされたことないんで、

 びっくりするんだけど。




 さらに。

 昼。

「佐藤さん」

 差し出された紙袋。

「はい?」

 んー。いい匂い~♪

 中を見る。

 ――唐揚げ!

「えっ!?」

「好きでしょ」

 しかも。

 わたしが好きな店の、

 めちゃくちゃ美味しいやつ。

「なんで知ってんの!?」

「前に話してた」

 え。

 覚えてたの?

 そんな前の話。




 その後も。

「階段、気をつけて」

「重いのオレが持つよ」

「ちゃんと食べた?」

 気づけば。

 いつも隣にいる。

 そして。

 あたしを見てる。

 スタッフたちが、こそこそ言い始めた。

『神宮寺さん、佐藤さんにだけ甘くない?』

『え、もしかして……』

『いやいや!』




 その時。

 ヒロイン役――美人刑事《ひかり》役の女優が笑った。

「湊くん、分かりやすすぎ」

 え。

 すると。

 湊が、普通の顔で言う。

「あいつのこと、好きなんで」

 …………。

 現場。

 停止。

「え?」

 また!?

 また公開処刑!?

 しかも。

 今度は隠す気ゼロ!?

 顔が熱い。

 無理。

 死ぬ。

 でも。

 その夜。

 ネットニュースが出た。

【神宮寺湊、ぽっちゃり女優に熱愛!?】

【美女ではなく癒し系を選んだ理由】

【格差恋か!?】

 そして。

 コメント欄。

《売名?》

《釣り合わない》

《神宮寺がもったいない》

 胸が、少しだけ痛んだ。

 ――やっぱり。

 そうなるよね。