ぽっちゃりな私を好きになるなんて、国宝級イケメン俳優おかしくないですか!?

 ――無理。

 心臓が。

 もたない。

「……ますます好きになった」

 さらっと言うな。

 そんな顔で。

 そんな声で。

 しかも距離近い。

「ちょ、ちょっと待って!」

 思わず一歩下がる。

「相手、あたしだよ!?」

 湊《みなと》がきょとんとした。

「うん」

「いや、『うん』じゃなくて!」

 指を自分に向ける。

「ぽっちゃり!」

「食べる!」

「寝る!」

「撮影の差し入れ、全部チェックする!」

「知ってる」

 即答。

「この前も、唐揚げの数、数えてた」

「見てたの!?」

 恥っっっ!!

 穴があったら入りたい!!

 湊が吹き出した。

 笑ってる。

 くっそ顔がいい。




「あと」

 少しだけ真面目な顔になる。

「頑張りすぎる」

 え。

「人のためだと、無理するでしょ」

 その声が、やさしかった。

「そういうとこ、放っておけない」

 ……だめ。

 こういうの弱い。

 ちょっと泣きそう。



 その時。

「さ、佐藤さん……!」

 後ろから小さな声。

 振り向く。

 春野先生だった。

 まだ顔が赤い。

「あ、あの」

 資料をぎゅっと抱えてる。

「本当に……ありがとうございました」

 ぺこっと頭を下げた。

「私、ドラマって、もっと怖いところだと思ってて……」

 小さく笑う。

「でも」

 目が少し潤んだ。

「作品を好きって言ってもらえて、嬉しかったです」

 あ。

 ダメ。

 泣く。

「先生ぇぇぇ……!」

 思わず抱きつきそうになって止まる。

 危ない。

 初対面。

「絶対守るから!」

「この作品!!」

 春野先生が目を丸くして。

 そして。

 ふふっと笑った。

 その瞬間。

 後ろから、低い声。

「俺も守る」

 湊。

 なんか自然に隣いる。

 近い。

 近いって。

「原作も」

 一瞬。

 こっちを見る。

「……佐藤さんも」

 ――え。

 待って。

 それ。

 今。

 さらっと言った?

 春野先生が、ぱちぱち瞬き。

 そして。

 小声で。

「……え、尊い」

 やめて。

 作者がニヤニヤしないで。





 数週間後。

 撮影スタート。

 そして、

 初日の現場で。

 あたしは知ることになる。

 神宮寺湊が――。

 想像以上に《《甘い男》》だったことを。