甘く熱い口づけを交わしたあと、愛斗はそっと弥生の服を脱がせていった。肌が露わになると、そこには五朗から受けた暴力の痕が、痛々しく残っていた。
愛斗は弥生を優しく抱き寄せ、そのあざの一つひとつに、そっと唇をつけた。まるで傷を癒すかのように、何度も何度も舐めていく。
「愛斗くん……何してるの?」
弥生が不思議そうに瞳を瞬かせると、愛斗は顔を上げずに優しい声で答えた。
「弥生さんが痛い思いをした分、俺がその痛みを和らげてるんだ。俺が代わりに全部、抱きしめてあげるから」
あのとき彼女が殴られ、体だけじゃなく心まで痛めつけられた時間。どれほど辛く、どれほど怖かっただろう——そんな弥生の気持ちを想いながら、愛斗は丹念に傷跡に口づけた。
驚いた表情を浮かべていた弥生だったが、次第にその瞳を潤ませ、ただ黙って愛斗の優しさを受け入れてくれた。
愛斗はそのまま、何もかも包み込むように弥生を抱きしめた。
弥生もまた、愛斗のシャツをぎゅっと握りしめ、その胸にすべてを預けるように身をゆだねた。
二人はただ、互いの温もりだけを感じながら、長い時間を過ごした。
やがて落ち着きを取り戻すと、ゆっくりと服を着て、寄り添ったまま眠りについた。
翌朝。
柔らかな日差しが部屋を照らし、二人は目を覚ました。
愛斗が起き上がると、弥生が台所で朝ご飯を作って待っていてくれた。テーブルに並べられたのは、愛斗の好きなお味噌汁に、焼き魚に、炊き立てのご飯。
「いただきます」と手を合わせ、一口食べると、疲れも悲しみも全部洗い流すような、優しい味が口いっぱいに広がった。
食事を終え、愛斗が仕事の支度を整えると、弥生が玄関まで出てきてくれた。
「愛斗くん、いってらっしゃい。気をつけてね」
「ありがとう。いってきます」
愛斗は弥生の額にそっとキスをして、笑顔で家を出た。
会社に着くと、愛斗はまず最初にみんなのところへ行き、深く頭を下げた。
「先日は俺のせいで、五朗が乗り込んできて、皆さんに本当に迷惑をかけました。不快な思いをさせてしまって、すみませんでした」
渡辺や木下、田尻をはじめ、周りの同僚たちは、みんな優しく笑ってくれた。
「もう気にしてないよ」
「愛斗くんは悪くないから」
「大変だったね、お疲れ様」
温かい言葉をかけてもらい、愛斗は心からの感謝を伝えた。「ありがとうございます」——この会社に、この仲間たちに、どれほど救われたかわからない。
その日は一日、みんなの助けもあって、集中して仕事に取り組むことができた。
仕事が終わると、愛斗は帰り道にとあるケーキ屋さんへ立ち寄った。
少し迷ったけれど、今日は弥生が喜ぶ顔が見たくて、一番美味しそうなケーキを一つ選んで、家へと急いだ。
「ただいま」
玄関のドアを開けると、弥生が「おかえりなさい」と笑顔で飛びついてくる。
愛斗はそのまま弥生を抱き上げ、軽々とお姫様抱っこをした。
「わっ、愛斗くん!?」と驚く弥生を抱えたまま、まずは買ってきたケーキをテーブルに置き、次にソファまで連れて行って、そっと横になるように寝かせた。
「はぁ……もう、びっくりした」
頬を少し赤らめる弥生の上に、愛斗は覆いかぶさるように抱きしめた。
「ただいま、弥生さん。会いたかった」
「私も……ずっと待ってた」
再び甘い時間を過ごしたあと、二人は服を整える。
弥生はこれから夕ご飯の支度をするため、エプロンを身に着けた。だが、背中で結ぶ紐がどうにも上手くいかず、手間取っている。
「どうしたの?」
「後ろが結べなくて……」
愛斗は弥生の背中に回り、すらりと伸びた指で、ささっと紐を結んであげた。
「はい、完成」
「ありがとう」
振り返った弥生に、愛斗は後ろからぎゅっと抱きついて——バックハグの体勢のまま、首筋にそっとキスを落とした。
「愛斗くん、くすぐったいよ」
「もうちょっとだけ……」
ようやく離れると、弥生は「ほら、見て」と、出来上がった料理を指さした。
そこには大きな鍋いっぱいに作られた、ビーフシチューが湯気を立てていた。
「わあ、すごい……」
よく見ると、ルーから丁寧に作ったらしく、野菜はじっくり煮込まれて形はなくなっているけれど、その分、一口大のお肉がゴロゴロと柔らかく煮えている。
「めちゃくちゃ美味そうだな」
「ルウから作るの、久しぶりだから……ちゃんと美味しくできてるか、自信ないんだけど」
「絶対美味いに決まってる。俺、弥生さんの作るものなら、なんだって大好きなんだから」
弥生は嬉しそうに「ありがとう」と笑った。
二人はテーブルにつき、「いただきます」と手を合わせた。
一口食べると、口の中いっぱいに深い旨みが広がり、柔らかいお肉がとろける。
「……めちゃくちゃうまいよ! 本当に!」
「ほんと? 良かった……!」
他愛もない話をたくさんしながら、温かいシチューをゆっくり味わった。
食事が終わると、お楽しみのケーキタイム。
今日買ってきたのは、フルーツがたっぷり乗ったフルーツタルトだ。
一つしか買えなかったけれど、二人で仲良く半分ずつに分けて。愛斗が自分の分のいちごを、弥生のお皿にそっと乗せてあげる。
「はい、俺のいちごもあげる」
「ありがとう、愛斗くん」
愛斗は弥生を優しく抱き寄せ、そのあざの一つひとつに、そっと唇をつけた。まるで傷を癒すかのように、何度も何度も舐めていく。
「愛斗くん……何してるの?」
弥生が不思議そうに瞳を瞬かせると、愛斗は顔を上げずに優しい声で答えた。
「弥生さんが痛い思いをした分、俺がその痛みを和らげてるんだ。俺が代わりに全部、抱きしめてあげるから」
あのとき彼女が殴られ、体だけじゃなく心まで痛めつけられた時間。どれほど辛く、どれほど怖かっただろう——そんな弥生の気持ちを想いながら、愛斗は丹念に傷跡に口づけた。
驚いた表情を浮かべていた弥生だったが、次第にその瞳を潤ませ、ただ黙って愛斗の優しさを受け入れてくれた。
愛斗はそのまま、何もかも包み込むように弥生を抱きしめた。
弥生もまた、愛斗のシャツをぎゅっと握りしめ、その胸にすべてを預けるように身をゆだねた。
二人はただ、互いの温もりだけを感じながら、長い時間を過ごした。
やがて落ち着きを取り戻すと、ゆっくりと服を着て、寄り添ったまま眠りについた。
翌朝。
柔らかな日差しが部屋を照らし、二人は目を覚ました。
愛斗が起き上がると、弥生が台所で朝ご飯を作って待っていてくれた。テーブルに並べられたのは、愛斗の好きなお味噌汁に、焼き魚に、炊き立てのご飯。
「いただきます」と手を合わせ、一口食べると、疲れも悲しみも全部洗い流すような、優しい味が口いっぱいに広がった。
食事を終え、愛斗が仕事の支度を整えると、弥生が玄関まで出てきてくれた。
「愛斗くん、いってらっしゃい。気をつけてね」
「ありがとう。いってきます」
愛斗は弥生の額にそっとキスをして、笑顔で家を出た。
会社に着くと、愛斗はまず最初にみんなのところへ行き、深く頭を下げた。
「先日は俺のせいで、五朗が乗り込んできて、皆さんに本当に迷惑をかけました。不快な思いをさせてしまって、すみませんでした」
渡辺や木下、田尻をはじめ、周りの同僚たちは、みんな優しく笑ってくれた。
「もう気にしてないよ」
「愛斗くんは悪くないから」
「大変だったね、お疲れ様」
温かい言葉をかけてもらい、愛斗は心からの感謝を伝えた。「ありがとうございます」——この会社に、この仲間たちに、どれほど救われたかわからない。
その日は一日、みんなの助けもあって、集中して仕事に取り組むことができた。
仕事が終わると、愛斗は帰り道にとあるケーキ屋さんへ立ち寄った。
少し迷ったけれど、今日は弥生が喜ぶ顔が見たくて、一番美味しそうなケーキを一つ選んで、家へと急いだ。
「ただいま」
玄関のドアを開けると、弥生が「おかえりなさい」と笑顔で飛びついてくる。
愛斗はそのまま弥生を抱き上げ、軽々とお姫様抱っこをした。
「わっ、愛斗くん!?」と驚く弥生を抱えたまま、まずは買ってきたケーキをテーブルに置き、次にソファまで連れて行って、そっと横になるように寝かせた。
「はぁ……もう、びっくりした」
頬を少し赤らめる弥生の上に、愛斗は覆いかぶさるように抱きしめた。
「ただいま、弥生さん。会いたかった」
「私も……ずっと待ってた」
再び甘い時間を過ごしたあと、二人は服を整える。
弥生はこれから夕ご飯の支度をするため、エプロンを身に着けた。だが、背中で結ぶ紐がどうにも上手くいかず、手間取っている。
「どうしたの?」
「後ろが結べなくて……」
愛斗は弥生の背中に回り、すらりと伸びた指で、ささっと紐を結んであげた。
「はい、完成」
「ありがとう」
振り返った弥生に、愛斗は後ろからぎゅっと抱きついて——バックハグの体勢のまま、首筋にそっとキスを落とした。
「愛斗くん、くすぐったいよ」
「もうちょっとだけ……」
ようやく離れると、弥生は「ほら、見て」と、出来上がった料理を指さした。
そこには大きな鍋いっぱいに作られた、ビーフシチューが湯気を立てていた。
「わあ、すごい……」
よく見ると、ルーから丁寧に作ったらしく、野菜はじっくり煮込まれて形はなくなっているけれど、その分、一口大のお肉がゴロゴロと柔らかく煮えている。
「めちゃくちゃ美味そうだな」
「ルウから作るの、久しぶりだから……ちゃんと美味しくできてるか、自信ないんだけど」
「絶対美味いに決まってる。俺、弥生さんの作るものなら、なんだって大好きなんだから」
弥生は嬉しそうに「ありがとう」と笑った。
二人はテーブルにつき、「いただきます」と手を合わせた。
一口食べると、口の中いっぱいに深い旨みが広がり、柔らかいお肉がとろける。
「……めちゃくちゃうまいよ! 本当に!」
「ほんと? 良かった……!」
他愛もない話をたくさんしながら、温かいシチューをゆっくり味わった。
食事が終わると、お楽しみのケーキタイム。
今日買ってきたのは、フルーツがたっぷり乗ったフルーツタルトだ。
一つしか買えなかったけれど、二人で仲良く半分ずつに分けて。愛斗が自分の分のいちごを、弥生のお皿にそっと乗せてあげる。
「はい、俺のいちごもあげる」
「ありがとう、愛斗くん」

