冬の夕方。
最近は、
日が落ちるのも早い。
「はぁぁ……」
私は教室の机に突っ伏した。
眠い。
寒い。
「怠け者」
背後からつぶやかれた声に、
振り向く。
「おー!
さんきゅー」
私の横に座る葛西くんに、
数学のノートを手渡すのは。
「空のを写しとけば間違いないから」
「自分でやれよ」
今日も静かな、
空くん。
私は頬を机につけたまま、
窓の外をぼんやり見る。
「空くん、眠いねー」
「星野だけだよ、
眠いの」
窓の外は、
濃いオレンジ。
「もう!冷たい……」
うなだれる私の横で、
空くんの肩が揺れる。
「お前らは、
相変わらず夫婦だな」
葛西くんが笑いながら言った。
「違う!!」
反射で叫ぶ。
すると。
空くんまで。
「違う」
即答。
まただ。
ムカつく。
「空くん否定早い!!」
「事実」
「冷たっ!!」
葛西くんは肩を震わせながら、
続けた。
「いやでも、
そんな仲良いのに、
なんで空は
いつまでも“星野”呼び?」
「は?」
「みんな、
つむぎって呼んでるけど」
「勝手に呼んでろ」
「え、
空も呼べばいいのに。ね」
私の方をちらっと見る葛西くん。
その瞬間。
私は口を開いた。
「そ、空くんは、
星野がいいの」
ぴたり。
空気が止まる。
葛西くん、
一瞬目を丸くする。
「……え、
なにそれ」
私ははっとして、
慌てて視線を逸らした。
「あ、いやっ、
変な意味じゃなくて!!」
すると。
「やべ」
葛西くんが急に声を上げる。
「部活!!」
そしてそのまま、
お先!と笑いながら、
教室を飛び出していった。
◇
静かになる。
空くんは、
小さくため息をついた。
そのまま歩き始める。
「……帰る」
「あ、待って」
私も慌てて立ち上がる。
その瞬間。
机の脚に足を引っ掛けた。
「うわっ」
前に倒れそうになる。
すると。
どん。
立ち止まった空くんの背中にぶつかった。
一年前と同じ。
私も“同志”も、
少し背が伸びたけど。
「あほ」
前を向いたまま、
空くんが言う。
「うるさい……」
私はぶつけた鼻を押さえながら、
俯いた。
その時。
「……つむぎ」
え。
はっとして、
息を止める。
空くんは相変わらず、
前を向いたまま。
そして。
少しだけ低い声で言った。
「……俺が呼んだら、
嫌なの」
その声が、
やけに真面目で。
私は小さく唇を噛んだ。
そして。
珍しく、
小さい声で言った。
「……違うもん」
空くんが、
少しだけ振り返る。
私は俯いたまま、
ぎゅっと制服を握る。
「星野って呼ぶの、
空くんだけだし」
心臓は、
相変わらずうるさい。
「だから……」
でも。
言葉が止まらない。
「だから……
誰に呼ばれたか、
すぐ分かるから」
沈黙。
冬の夕方。
静かな教室。
目が合った時。
空くんが、
小さく息を漏らした。
「……変なやつ」
その声は、
いつもより少し柔らかかった。
窓の外。
冬の夕焼けが、
静かに教室を染めていた。
最近は、
日が落ちるのも早い。
「はぁぁ……」
私は教室の机に突っ伏した。
眠い。
寒い。
「怠け者」
背後からつぶやかれた声に、
振り向く。
「おー!
さんきゅー」
私の横に座る葛西くんに、
数学のノートを手渡すのは。
「空のを写しとけば間違いないから」
「自分でやれよ」
今日も静かな、
空くん。
私は頬を机につけたまま、
窓の外をぼんやり見る。
「空くん、眠いねー」
「星野だけだよ、
眠いの」
窓の外は、
濃いオレンジ。
「もう!冷たい……」
うなだれる私の横で、
空くんの肩が揺れる。
「お前らは、
相変わらず夫婦だな」
葛西くんが笑いながら言った。
「違う!!」
反射で叫ぶ。
すると。
空くんまで。
「違う」
即答。
まただ。
ムカつく。
「空くん否定早い!!」
「事実」
「冷たっ!!」
葛西くんは肩を震わせながら、
続けた。
「いやでも、
そんな仲良いのに、
なんで空は
いつまでも“星野”呼び?」
「は?」
「みんな、
つむぎって呼んでるけど」
「勝手に呼んでろ」
「え、
空も呼べばいいのに。ね」
私の方をちらっと見る葛西くん。
その瞬間。
私は口を開いた。
「そ、空くんは、
星野がいいの」
ぴたり。
空気が止まる。
葛西くん、
一瞬目を丸くする。
「……え、
なにそれ」
私ははっとして、
慌てて視線を逸らした。
「あ、いやっ、
変な意味じゃなくて!!」
すると。
「やべ」
葛西くんが急に声を上げる。
「部活!!」
そしてそのまま、
お先!と笑いながら、
教室を飛び出していった。
◇
静かになる。
空くんは、
小さくため息をついた。
そのまま歩き始める。
「……帰る」
「あ、待って」
私も慌てて立ち上がる。
その瞬間。
机の脚に足を引っ掛けた。
「うわっ」
前に倒れそうになる。
すると。
どん。
立ち止まった空くんの背中にぶつかった。
一年前と同じ。
私も“同志”も、
少し背が伸びたけど。
「あほ」
前を向いたまま、
空くんが言う。
「うるさい……」
私はぶつけた鼻を押さえながら、
俯いた。
その時。
「……つむぎ」
え。
はっとして、
息を止める。
空くんは相変わらず、
前を向いたまま。
そして。
少しだけ低い声で言った。
「……俺が呼んだら、
嫌なの」
その声が、
やけに真面目で。
私は小さく唇を噛んだ。
そして。
珍しく、
小さい声で言った。
「……違うもん」
空くんが、
少しだけ振り返る。
私は俯いたまま、
ぎゅっと制服を握る。
「星野って呼ぶの、
空くんだけだし」
心臓は、
相変わらずうるさい。
「だから……」
でも。
言葉が止まらない。
「だから……
誰に呼ばれたか、
すぐ分かるから」
沈黙。
冬の夕方。
静かな教室。
目が合った時。
空くんが、
小さく息を漏らした。
「……変なやつ」
その声は、
いつもより少し柔らかかった。
窓の外。
冬の夕焼けが、
静かに教室を染めていた。


