隣の席の悪魔 〜あの頃は、明日が当たり前だった

朝。

カーテンを開けた瞬間。

「わぁ……!」

外。

真っ白。

雪。

めちゃくちゃ積もってる。

「すごっ……!」

私は急いで制服に着替えた。

寒いけど。

雪の日って、
ちょっとだけ特別だ。



学校。

廊下。

窓の外。

真っ白な校庭。

「空くん見て!!
めっちゃ積もってる!!」

私のすぐ後に登校してきた空くん。

私は窓に張りつく。

「見えてる」

空くん。

いつもの眠そうな顔。

でも。

ちょっとだけ、
口元が緩んでる。

「雪合戦したい!!」

「子どもか」

「冷たい!!」



昼休み。

結局、
雪合戦になった。

「うわっ!!」

「つむぎ逃げろー!!」

校庭。

寒い。

でも、楽しい!

青春だから!

私は雪を丸めて、
葛西くんへ投げる。

「ノッポ野郎ーー!!」

「うわっ!?」

命中。

よし。

その時。

後ろから、
ひやっとした感覚。

「きゃっ!?」

首元。

冷たい。

私は勢いよく振り向く。

「空くーん!?」

空くん。

無表情。

でも。

口角が、
ほんのちょっと上がってる。

「……隙だらけ」

「最低!!」

私は雪を投げ返そうとして、
踏ん張る。

その時。

つるっ。

「わ!」

終わった。

転ぶ。

そう思った瞬間。

ぐいっ。

腕を掴まれる。

「……なんでそうなんの」

近い。

白い息。

雪が眩しい。

「ごめん……」

空くんは少し眉を寄せたまま、
私を見る。

その時。

ふわっ。

風が吹く。

雪が舞う。

そして。

空くんの視線が、
ぴたりと止まった。

「……雪」

「え」

次の瞬間。

空くんの手が、
私の髪に触れる。

思考停止。

え。

近い。

指。

髪。

さらっ。

白い雪を払うみたいに、
空くんの指が動く。

心臓。

うるさい。

空くん。

普通の顔。

すごく自然に、
触れられてる。

まるで、
当たり前みたいに。

その瞬間。

空くんが、
はっとしたみたいに目を瞬く。

そのあと。

ぱっと手を離した。

「……っ」

珍しく。

少しだけ焦った顔。

え。

なに今。

すると。

後ろから、
葛西くんが笑いながら近づいてくる。

「うわ空!!
さらっとやるじゃん!!」

ぴたり。

空気が止まる。

空くんは、
無言。

耳。

真っ赤。

……あ。

私は一気に顔が熱くなる。

「いや今、
完全に少女漫画だったけど?」

「うるさい」

低っ。

でも。

空くん、
ちょっと焦ってる。

珍しい。

私は空くんを見る。

空くんは、
少しだけ眉を寄せる。

「……雪ついてた」

え。

数秒停止。

「そ、それだけ!?」

「それ以外なにがある」

即答。

私はマフラーに顔を埋めた。

心臓。

うるさい。

その時。

空くんが、
小さくため息をつく。

「……もう転ぶなよ」

「空くんのせいだし!!」

「知らない」

雪って、
ずるい。

いつもの距離が、
少しだけおかしくなるから。