◇ 空 side ◇
朝。
教室。
俺はいつも通り、
自分の席につく。
鞄を置く。
頬杖。
眠い。
窓の外は、
晴れ。
……そろそろ、
あいつが来る。
そう思った時。
教室のドアが――
開かない。
……あれ。
その時。
「つむぎ、
今日休みだって〜」
女子の声。
……風邪か。
珍しい。
◇
ホームルーム前。
静か。
誰も。
『空くん見て!
シャーペンの芯めっちゃ長く出た!!』
なんて、
意味の分からない報告をしてこない。
……平和。
◇
一時間目。
授業。
集中できる。
隣から。
『空くん、
先生はいったい何の話してるの?』
って、
教科書を指で揺らされない。
……快適。
◇
二時間目。
ページをめくる音だけが響く。
……妙に落ち着いてる。
いつもなら。
『ねぇ空くん』
『なに』
『この漢字なに?』
って、
小学生みたいなことを聞いてくる。
しかも。
「そこに書いてる」
って答えると。
『えっほんとだ!』
って、
ケラケラ笑う。
……なんなんだ、あいつ。
◇
休み時間。
葛西が、
後ろの席へ座り込む。
「空」
「なに」
「今日静かだな」
「普段がうるさいだけ」
葛西が吹き出す。
「隣いないと、
授業集中できる?」
「集中できるし」
即答。
「読書も進む」
「よかったじゃん」
「平和」
本のページをめくりながら、
なんとなく隣を見る。
……空っぽ。
その瞬間。
気づけば、
読む場所が少し飛んでいた。
……迷惑。
◇
昼休み。
購買帰り。
パンと牛乳を持って、
席へ戻る。
いつもなら。
『一口ちょうだい!』
って、
身を乗り出してくる。
しかも。
断ると。
『ケチ!!』
って騒ぐ。
意味が分からない。
今日は来ない。
……静か。
◇
五時間目。
居眠りの生徒が多発する時間。
いつもなら。
隣から、
小さい声。
『……空くん、
起きてる?』
しかも。
俺が無視すると。
今度は。
カチカチカチカチ。
シャーペンの後ろで、
机をつついてくる。
うるさい。
今日は何もない。
……妙に静か。
◇
放課後。
教室。
夕焼け。
いつもなら。
『空くん今日走る!?』
って。
もう走るのが決まってるみたいに、
笑ってるのに。
今日は何もない。
……調子が狂う。
俺は鞄を持ったまま、
なんとなく窓の外を見る。
その時。
葛西が、
後ろから笑った。
「空」
「なに」
「今日さ」
葛西は、
にやにやしながら続ける。
「つまんなそう」
「は?」
俺は小さく眉を寄せる。
すると。
葛西が、
肩を震わせながら笑った。
「顔に出てんだよ」
「……何が」
◇
帰り道。
ひとり。
やけに静かだった。
……今日、
走ってない。
その瞬間。
なんか。
少しだけ、
足が重く感じた。
◇
翌朝。
教室のドアが、
勢いよく開く。
「空くーん!!」
聞き慣れた声。
俺は顔を上げる。
星野。
いつも通り。
うるさい。
「熱下がった!!」
「朝から元気すぎ」
「えへへ」
星野は笑いながら、
いつもみたいに隣へ座る。
「空くん」
「なに」
「休んでる間、
ちょっと寂しかった?」
「……は?」
固まる俺に、
星野がにやにや笑った。
「顔がね、
そんな感じ!」
うるさい。
ほんと、
朝からうるさい。
でも――
俺は小さくため息をついた。
「……うるさい」
でも。
今日の教室は、
昨日よりちゃんと、うるさかった。
朝。
教室。
俺はいつも通り、
自分の席につく。
鞄を置く。
頬杖。
眠い。
窓の外は、
晴れ。
……そろそろ、
あいつが来る。
そう思った時。
教室のドアが――
開かない。
……あれ。
その時。
「つむぎ、
今日休みだって〜」
女子の声。
……風邪か。
珍しい。
◇
ホームルーム前。
静か。
誰も。
『空くん見て!
シャーペンの芯めっちゃ長く出た!!』
なんて、
意味の分からない報告をしてこない。
……平和。
◇
一時間目。
授業。
集中できる。
隣から。
『空くん、
先生はいったい何の話してるの?』
って、
教科書を指で揺らされない。
……快適。
◇
二時間目。
ページをめくる音だけが響く。
……妙に落ち着いてる。
いつもなら。
『ねぇ空くん』
『なに』
『この漢字なに?』
って、
小学生みたいなことを聞いてくる。
しかも。
「そこに書いてる」
って答えると。
『えっほんとだ!』
って、
ケラケラ笑う。
……なんなんだ、あいつ。
◇
休み時間。
葛西が、
後ろの席へ座り込む。
「空」
「なに」
「今日静かだな」
「普段がうるさいだけ」
葛西が吹き出す。
「隣いないと、
授業集中できる?」
「集中できるし」
即答。
「読書も進む」
「よかったじゃん」
「平和」
本のページをめくりながら、
なんとなく隣を見る。
……空っぽ。
その瞬間。
気づけば、
読む場所が少し飛んでいた。
……迷惑。
◇
昼休み。
購買帰り。
パンと牛乳を持って、
席へ戻る。
いつもなら。
『一口ちょうだい!』
って、
身を乗り出してくる。
しかも。
断ると。
『ケチ!!』
って騒ぐ。
意味が分からない。
今日は来ない。
……静か。
◇
五時間目。
居眠りの生徒が多発する時間。
いつもなら。
隣から、
小さい声。
『……空くん、
起きてる?』
しかも。
俺が無視すると。
今度は。
カチカチカチカチ。
シャーペンの後ろで、
机をつついてくる。
うるさい。
今日は何もない。
……妙に静か。
◇
放課後。
教室。
夕焼け。
いつもなら。
『空くん今日走る!?』
って。
もう走るのが決まってるみたいに、
笑ってるのに。
今日は何もない。
……調子が狂う。
俺は鞄を持ったまま、
なんとなく窓の外を見る。
その時。
葛西が、
後ろから笑った。
「空」
「なに」
「今日さ」
葛西は、
にやにやしながら続ける。
「つまんなそう」
「は?」
俺は小さく眉を寄せる。
すると。
葛西が、
肩を震わせながら笑った。
「顔に出てんだよ」
「……何が」
◇
帰り道。
ひとり。
やけに静かだった。
……今日、
走ってない。
その瞬間。
なんか。
少しだけ、
足が重く感じた。
◇
翌朝。
教室のドアが、
勢いよく開く。
「空くーん!!」
聞き慣れた声。
俺は顔を上げる。
星野。
いつも通り。
うるさい。
「熱下がった!!」
「朝から元気すぎ」
「えへへ」
星野は笑いながら、
いつもみたいに隣へ座る。
「空くん」
「なに」
「休んでる間、
ちょっと寂しかった?」
「……は?」
固まる俺に、
星野がにやにや笑った。
「顔がね、
そんな感じ!」
うるさい。
ほんと、
朝からうるさい。
でも――
俺は小さくため息をついた。
「……うるさい」
でも。
今日の教室は、
昨日よりちゃんと、うるさかった。


