隣の席の悪魔 〜あの頃は、明日が当たり前だった

「やばーーー!!
修学旅行だぁぁぁ!!!」

朝。

新幹線ホーム。

私は大興奮だった。

ホームに溢れる人。

スーツケースのタイヤの音。

前で話してる先生の話は長いけど、
楽しい!

だって、
修学旅行だから!!!

「星野、
朝からうるさい」

隣の空くんは、
眠そう。

なんでそんなに冷静でいられるの。

「え、空くん楽しくないの!?」

「普通」

「もったいな!!」

その時。

後ろから、
葛西くんの声。

「空、
学校の外でも完全に保護者じゃん」

「違う」

空くんが即答。

葛西くんの肩が震えてる。



「席自由だけど、
なるべく班で集まって座れよー!」

先生の声。

「窓側!」

「後ろ行こー!」

みんながゾロゾロ動き出す。

空くんは、
一番後ろの列の窓側へ座った。

端っこ、
好きそう。

そう思いながら、
私はその隣へ座る。

荷物を置く。

お菓子出す。

準備完了。

その時。

「……なんで、
もう横いんの」

え。

顔を上げる。

空くん。

少し呆れた顔。

私は瞬きをする。

「……え?」

周りを見る。

まだみんな、
席を決めてる途中。

あ。

私。

無意識で座ってた。

「……あ」

その瞬間。

前の席から、
葛西くんの笑い声。

「お前ら、
もう席固定なん?」

「っ……!」

私は一気に顔が熱くなる。

「たまたまだし!!」

隣の空くんは、
呆れた顔のまま、
窓の外へ目を向けた。



新幹線。

発車。

景色が流れ始める。

「うわーーー!!!」

私は窓の方へ身を乗り出した。

「動いてる!!」

「新幹線だからな」

「速っ!!」

「知ってる。
知ってるから暴れんな」

空くん、
ちょっと笑ってる。

その時。

「つむぎ、
何してるのー?」

前の席の女子が振り向く。

私は高々と、
お菓子袋を掲げた。

「お菓子食べるとこ!」

「朝から?」

「修学旅行だから!」

「つむぎっぽい!」

その隣の葛西くんが、
笑いながら手を伸ばしてくる。

「俺も食う」

「ちょっと!
まだ私も食べてないのに!」

「空も食べたいって」

その瞬間。

空くんが、
ちらっとこっちを見る。

数秒。

そして。

「……食べる」

え。

「空くん、
お菓子食べるんだ!」

「悪い?」

「意外!」

「偏見」

私は笑いながら、
お菓子を差し出す。

その時。

新幹線が少し揺れた。

「あっ」

バランスが崩れる。

お菓子、
落ちちゃう!

その瞬間。

空くんの手が、
私の手とお菓子の袋を、
同時に掴んだ。

「……また、
危なすぎ」

その時。

葛西くんが、
にやにや笑った。

「保護者、
仕事早」

「うるさい」

ぶっきらぼうに返す空くんに、
頬が緩む。

新幹線。

お菓子。

笑い声。

窓の外が、
どんどん知らない景色になっていく。