隣の席の悪魔 〜あの頃は、明日が当たり前だった

入学して半年が過ぎた、
十月のある日。

「席替えするぞー」

先生の声。

その瞬間。

私は固まった。

……席替え?

私はゆっくり隣を見る。

空くん。

頬杖をついてる。

いつも通り。

「ちょっと空くん!」

「なに」

「なんで平気なの!?」

「なにが」

私はぐいっと身を乗り出した。

「だってさー!
席離れたら!」

「ん」

「授業中、
空くんのノート覗けないし!」

「……」

「消しゴム飛ばせないし!」

「……」

「シャーペンで机つつけないし!」

「……」

「走るの誘いづらいし!」

「……嘘つけ。
別にいいだろ」

「よくない!!」

叫ぶ。

空くんが鼻で笑った。

「……今の聞く限り、
利点しかないんだけど」

「ねーーー!!!」

後ろで、
葛西くんが吹き出した。

「空の隣人、
構ってちゃんの極みだな」

「葛西くんは黙ってて!!」

私はむすっと頬を膨らませた。



「じゃあ、
くじ引けー」

先生が箱を持って歩く。

私はそわそわしながら、
紙を引いた。

書かれていた番号と、
黒板の席表を見比べる。

「あ、
あそこだ」

今よりずっと、
廊下側。

私はちらっと空くんを見る。

「空くん、
何番?」

「さあ」

「えー!
なんで教えてくれないの!?」

「別に」

絶対、
分かってる。

私はむっと頬を膨らませた。

「もーー!!
じゃあね空くん!」

私は教科書を抱えて、
新しい席へ向かった。



新しい席。

教科書を入れ直す。

……隣、
誰だろ。

その時。

ガタッ。

隣から、
椅子を引く音。

私は反射みたいに顔を上げた。

そこにいたのは――

「空くーーーーん!!!」

空くん。

やれやれ、
みたいな顔。

「……早すぎる再会だな」

「やったーー!!
また隣だ!!」

私は机をばんばん叩く。

すると。

空くんが、
視線を逸らした。

「……勘弁してくれ」

そう言うくせに。

空くんの口元、
ちょっとだけ笑ってた。