九月。
暦では秋なのに、
まだ夏みたいな暑さが残っていた。
空は真っ青で。
大きな入道雲は、
相変わらず空の端にそびえ立っている。
グラウンドの照り返しが眩しい。
「暑っっっ……」
私はタオルで顔をあおぎながら、空を見上げた。
体育大会。
朝からずっと、
グラウンドは騒がしい。
笛の音。
応援の声。
スピーカーから流れる音楽。
全部ごちゃごちゃしてる。
でも。
楽しい。
だって青春だから!
「星野ー!!
次出番だぞ!」
クラスメイトに呼ばれて、
私は慌てて立ち上がる。
「うわ、やば!」
リレー。
緊張する。
でも。
ちょっと楽しみ。
だって。
空くんと走ってたから。
きっと前より
速く走れる気がする。
私はスタート位置へ向かいながら、ふと観客席を見る。
……いた。
空くん。
木陰で腕組み。
眠そう。
なんでそんなに涼しそうなの。
その隣には、
葛西くん。
こんな時でもノッポ。
◇
「位置について――」
ピストルの音。
ダッ。
地面を蹴って走り出す。
風。
歓声。
太陽。
全部ぐちゃぐちゃなのに、
やっぱり気持ちいい。
なんでかって。
青春だから!!!
「星野ーー!!」
え。
声は、
さっき見た木陰から。
空くん。
立ってる。
「前見て走れー!!!」
その隣で、
葛西くんが腹抱えて笑ってる。
……言わされたな?
でも。
それでも。
空くんの声、
ちゃんと聞こえた。
笑ってしまう。
負けたくない。
空くんの前だと、
余計に。
◇
「……はぁっ……」
競技を終えた私は、
テントに座り込んだ。
暑い。
汗。
やばい。
その時。
「うわっ」
冷たいペットボトルが、
頬に当てられる。
顔を上げる。
空くん。
「……死にそうじゃん」
「空くんの応援のせいでしょ……」
「は?」
「なんか叫んでたし!」
空くんが止まる。
その後ろで、
葛西くんが肩を震わせてる。
「いやー、
空の叫びはレアだったわ」
「葛西黙れ」
声。
ちょっと掠れてるし。
耳。
……わかりやす。
私は吹き出した。
「ありがと」
ペットボトルを改めて頬に当てる。
冷たくて気持ちいい。
その時。
空くんが、視線を逸らした。
「……速かった」
え。
「褒めた!?」
「別に」
「今絶対褒めた!!」
「うるさい」
でも。
口元、
笑ってる。
◇
◇
午後。
空くんの出場競技は、
長距離走。
スタート位置へ向かう空くんに、私は思いっきり手を振った。
「空くーーーん!!!」
周りがちょっとこっちを見る。
でも。
気にしない。
「一位じゃなきゃ
ジュース奢りだからーーー!!!」
空くん、
口に人差し指を当てて、
目を細める。
“うるさい”
って顔。
葛西くんは、
相変わらず笑ってる。
「お前らほんと面白ぇな!!」
空くんは視線を落として、
そのままスタート位置についた。
◇
結果。
空くん。
普通に一位だった。
「なんかさぁ」
私はスポーツドリンクを飲みながら、むすっと口を尖らせる。
「苦しい時に、
私の応援思い出して頑張る、
みたいなのは?」
「なに?」
「はぁ。
こっちの話」
応援で元気づけられたの、
私だけってのがムカつく。
その時。
空くんが、
首の後ろに触れながら言った。
「……走っといて、
よかったよ」
汗。
風。
入道雲。
もう九月なのに、
夏みたいに真っ青な空。
空くんは、
少し笑っていた。
暦では秋なのに、
まだ夏みたいな暑さが残っていた。
空は真っ青で。
大きな入道雲は、
相変わらず空の端にそびえ立っている。
グラウンドの照り返しが眩しい。
「暑っっっ……」
私はタオルで顔をあおぎながら、空を見上げた。
体育大会。
朝からずっと、
グラウンドは騒がしい。
笛の音。
応援の声。
スピーカーから流れる音楽。
全部ごちゃごちゃしてる。
でも。
楽しい。
だって青春だから!
「星野ー!!
次出番だぞ!」
クラスメイトに呼ばれて、
私は慌てて立ち上がる。
「うわ、やば!」
リレー。
緊張する。
でも。
ちょっと楽しみ。
だって。
空くんと走ってたから。
きっと前より
速く走れる気がする。
私はスタート位置へ向かいながら、ふと観客席を見る。
……いた。
空くん。
木陰で腕組み。
眠そう。
なんでそんなに涼しそうなの。
その隣には、
葛西くん。
こんな時でもノッポ。
◇
「位置について――」
ピストルの音。
ダッ。
地面を蹴って走り出す。
風。
歓声。
太陽。
全部ぐちゃぐちゃなのに、
やっぱり気持ちいい。
なんでかって。
青春だから!!!
「星野ーー!!」
え。
声は、
さっき見た木陰から。
空くん。
立ってる。
「前見て走れー!!!」
その隣で、
葛西くんが腹抱えて笑ってる。
……言わされたな?
でも。
それでも。
空くんの声、
ちゃんと聞こえた。
笑ってしまう。
負けたくない。
空くんの前だと、
余計に。
◇
「……はぁっ……」
競技を終えた私は、
テントに座り込んだ。
暑い。
汗。
やばい。
その時。
「うわっ」
冷たいペットボトルが、
頬に当てられる。
顔を上げる。
空くん。
「……死にそうじゃん」
「空くんの応援のせいでしょ……」
「は?」
「なんか叫んでたし!」
空くんが止まる。
その後ろで、
葛西くんが肩を震わせてる。
「いやー、
空の叫びはレアだったわ」
「葛西黙れ」
声。
ちょっと掠れてるし。
耳。
……わかりやす。
私は吹き出した。
「ありがと」
ペットボトルを改めて頬に当てる。
冷たくて気持ちいい。
その時。
空くんが、視線を逸らした。
「……速かった」
え。
「褒めた!?」
「別に」
「今絶対褒めた!!」
「うるさい」
でも。
口元、
笑ってる。
◇
◇
午後。
空くんの出場競技は、
長距離走。
スタート位置へ向かう空くんに、私は思いっきり手を振った。
「空くーーーん!!!」
周りがちょっとこっちを見る。
でも。
気にしない。
「一位じゃなきゃ
ジュース奢りだからーーー!!!」
空くん、
口に人差し指を当てて、
目を細める。
“うるさい”
って顔。
葛西くんは、
相変わらず笑ってる。
「お前らほんと面白ぇな!!」
空くんは視線を落として、
そのままスタート位置についた。
◇
結果。
空くん。
普通に一位だった。
「なんかさぁ」
私はスポーツドリンクを飲みながら、むすっと口を尖らせる。
「苦しい時に、
私の応援思い出して頑張る、
みたいなのは?」
「なに?」
「はぁ。
こっちの話」
応援で元気づけられたの、
私だけってのがムカつく。
その時。
空くんが、
首の後ろに触れながら言った。
「……走っといて、
よかったよ」
汗。
風。
入道雲。
もう九月なのに、
夏みたいに真っ青な空。
空くんは、
少し笑っていた。


