「ねえ真央、集会終わったし今日はもう帰ろーよ」
「ダメですよ。『解決屋さん』の方の依頼が来てますよ」
「げぇー……」
あたしは硬い椅子の背もたれに身を預けて、そのままぐったりと天井を見上げた。
背もたれから流れたあたしの趣味じゃない長い髪が、窓から吹き込む風に揺れている。
「髪、床につきますよ」
「いーの」
そんなやりとりもいつものこと。
「で、依頼ってどんなの? 簡単なやつがいいな。怖い先生に用がある子の付き添いとか」
真央があたしの向かいの席に座って、生徒会室の入り口に設置した手作りポストの中身を広げた。
折り畳まれた何枚もの紙に統一感はなくて、ノートの切れ端やプリントの裏、可愛いキャラクターのメモに思い思いに依頼が書かれている。
どれどれ。
『無くした合鍵を探してほしい』
『先輩に渡す誕生日プレゼント選びを手伝ってほしい』
『友だちとケンカしたから仲直りの相談に乗ってほしい』
『好きな子へのラブレターに何を書いたらいいかわからない』
「……はあ? てめえのラブレターくらいてめえで書けっつーの! 誰かの添削ラブレターなんてもらっても嬉しくないに決まってんじゃん」
「雅さんって、ちゃんとそういう感性あったんですね」
真央がびっくりしたみたいにあたしを見た。
「あるわっ! バカにするな」
拳を丸めて振りかぶる真似をする。
だけどテーブルひとつ分向こうにいる真央はくすくすと笑うだけで、全く怖がってない。
そんなやりとりだって、いつものことだ。


