「なんですか……?」
あたしの視線に気づいた真央が、きょとんとこっちを見上げる。
その表情は、あまり感情が読めない。
切れ長の目。
きゅっと結んだ唇。
低い声。
真央が黙って立っているだけで、廊下に出ていた生徒たちがサッと道を開ける。
みんなが口を揃えて真央が怖いと言う。
真央が怖い? どこが?
昔はいつも眉を八の字にして、目に涙をいっぱい浮かべていた。
そして「みやびちゃん、おいていかないでよぉ」とあたしの後をついてきていた。
だけどいつの間にか、真央の声は低くなっていて。
その声であたしを「雅さん」って呼ぶようになって。
あたしの後を走って追いかけるんじゃなくて、あたしのスピードに合わせて後ろをゆっくりついてくるようになって――。
……だから、真央は怖いヤツなんかじゃない。
今でも真央の部屋に出た虫を退治するのはあたしなんだから。
だけど、今の真央は――
「……なんもない」


