――僕は、夜道を、ゆっくりと歩く。
あのときの、お父さまの言葉。
あの頃の幼い僕は、それをちゃんと理解できなかったけれど、ずっと、ずっと、胸の奥のあたたかいところに、しまってあった。
だから僕は、その後の十数年、ずっと、雅さんの後ろにいた。
「ボディーガード」という、僕には大きすぎた肩書きの中身を、自分のものにできるように。
またいつか、雅さんに「ありがと。かっこよかった」と言ってもらえるように。
雅さんは、もちろん、そんなことには気づいていない。
あの日、雅さんのお母さまの冗談から始まった「ボディーガード」がいつの間にか僕の肩書き(無償)になって今も続いているなんて――雅さんはそんなこと、忘れていると思うけど。
だけど僕は、雅さんの後ろにいられたら、そのきっかけがなんだっていいんだ。
僕は、夜の街灯の下で、ふっと笑った。


