庭で、犬から雅さんを庇った、あの日――。
そのあと、泥だらけで泣いている僕たちに驚いたみやびちゃんのお母さまが僕たちを部屋に呼んだ。
鼻水を拭いたスカートを着替えて落ち着いたみやびちゃんは、お父さまとお母さまに、興奮気味にあの出来事を話してまわった。
「あのね! まおが、おっきい犬から、みやびを守ってくれたの!」
「みやびのまえに、ばーん! って立ってくれたの!」
「そしたら犬がどっかにいっちゃったの!」
お父さまは雅さんの頭を撫でながら、僕の前にも腰をかがめてくれた。
「真央くん。雅を守ってくれて、ありがとう」
ぼくは、なんと答えていいか、分からなかった。
本当のことを言えば、何も考えずに飛び出しただけだったし、犬が止まったのも、キセキみたいに偶然だったと思う。
だからぼくは、みやびちゃんが言ってくれたほど、かっこよくはなかった。
「ふふ。ボディーガードみたいね、真央くん」
みやびちゃんのお母さまが、そう言って、くすくす笑った。
「ぼでぃーがーど?」
雅さんが、不思議そうに首を傾げる。
「みやびみたいに、おてんばなお嬢様を、守ってくれる、かっこいい人のことよ」
その瞬間、雅さんの目が、ぱあっと輝いた。
「まおだ! まおだー!」
「まおは、今日からみやびのぼでぃーがーどね!」
雅さんは、ぼくの腕を引っ張って、宣言した。
ぼくは困って、ぽつりと言った。
「……でも、ぼくよりみやびちゃんのほうが、つよいよ」
それは、本当のことだった。
かけっこはみやびちゃんのほうが速かったし、ケンカもみやびちゃんのほうが強かった。
ダンゴムシもカブトムシも、みやびちゃんのほうが平気だった。
ぼくは何一つ、みやびちゃんに勝てるものを持っていなかった。
勝つどころか、みやびちゃんに追いつくことすらできないぼくなのに。
だから、ボディーガードなんて、ぼくには無理だと思った。
そのとき。
みやびちゃんのお父さまが、ぼくの頭に、そっと手を置いた。
そして、笑いながら、こう言ってくれた。
『雅はね、真央くんが後ろにいるから、強がれるんだよ』


