テンプレお嬢様は犬も食わない!〜強がりお嬢様と泣き虫幼馴染〜



真央は泣き虫だった。

あたしの後ろをついてきて、すぐ泣いて、すぐ怖がって、虫が出たらあたしを呼んで。

なのに。

あの日からの真央の泣き顔が、ひとつも思い出せない。


そのかわりに思い出すのは、いつもあたしの少し後ろにいる真央。

生徒会室でも、昇降口でも、解決屋さんの依頼を受ける時も。

真央はいつも、あたしの一歩後ろにいた。




昔、あたしの前に立って「守る」って言ったくせに。

あの時はあたしの前に立ってくれたくせに。

あたしの、幼馴染のくせに。



だから、あの夢を見た朝、あたしは言ったんだ。

……なにが『守る』だよ、って。


なんで、あたしの横でも前でもなく「後ろ」にいるんだよ、って。




でも、真央は――



あたしの仮面が剥がれそうになった時、後ろから教えてくれた。
あたしが暴走しそうになった時、後ろから止めてくれた。
あたしが本当に危なくなった時、後ろから手を伸ばしてあたしを守ってくれた。



「……そっか」


小さな声が、涙と一緒にスカートにぽとんと落ちた。


「ずっと、後ろにいてくれたんだ」


――だからさっき、あたしは仮面をかぶって前に立てたんだね。



真央が、濡れた目であたしを見る。


「……真央、守ってくれてありがとう。かっこよかった」


真央の眉間に、グッと深くシワが寄った。


その八の字になった眉を見て、あたしはプッと吹き出す。



真央の泣き顔、昔と全然変わってないじゃん。



そう思ったのにその泣き顔がどんどん霞んで見えなくなる。

真央の泣き顔なんて見慣れてるはずなのに、おかしいな。

あたしは握っていたスカートの裾をぐっと引っ張り、昔みたいに、そのまま目元を拭おうとして――。