テンプレお嬢様は犬も食わない!〜強がりお嬢様と泣き虫幼馴染〜



頬に、何かが伝った。

風が当たって、そこだけひやりと冷たい。

あたしは指先でそっと頬に触れる。



「……え」


なんで。

なんで、泣いてんの。

あたしは勝ったじゃん。

ちゃんと守ったじゃん。

真央も、マロンも、あの野良犬も、あたし自身も。


なのに。

ぽろぽろ、ぽろぽろ。

涙が勝手にこぼれて、スカートの上に小さな黒い染みを増やしていく。


「……怖かった」


声に出した瞬間、胸の奥に押し込んでいた恐怖がどっと溢れ出した。


「怖かったぁ……!」


その言葉と一緒に、ポトリと仮面が剥がれ落ちた。

あたしは真央のスマホを握りしめたまま、子どもみたいにしゃくり上げた。


「まお……こわかったよぉ……!」


そんなあたしの横に、真央がゆっくりとしゃがむ。


「ほんっと……みやびちゃんは、なんでそんなに無鉄砲なんですか」

「……え?」


『みやびちゃん』と呼ばれて、思わず涙でぐちゃぐちゃの顔を上げる。


『みやびちゃん』と言った真央の声はさっきみたいに低くはなかった。

だけどそのかわりに、小さく震えていた。


「……まお?」


名前を呼んだ瞬間、真央はびくりと肩を揺らした。

それから、あたしから顔を隠すみたいに俯く。



……ん?